第2話 日常の崩壊と開戦
ラボに戻ってきた俺達は、研究を再開した。
「とりあえず、今日も結晶化エネルギーを貯蓄する方法を一度やってみて、上手く行ったら、エネルギーの活用方法の実験をやるよ!!」
「OK、じゃあ、早速結晶を使うぞ……」
そう一言晴が言った直後、晴の胸の前に結晶が現れた。
「本当にいつ見ても君の結晶は綺麗だね」
晴は、赤と黄色、そして、特殊な属性の橙色の3色すなわち、
「とりあえず、太陽の力を使える橙色でいいか?」
結晶を掴み、握りしめた部分が橙色の部分であった。
「うん、火とか土はエネルギー変換効率が悪いからね!!とりあえず、3パーセントほどの力から始めよう」
「了解、じゃあ、早速やるよ!!」
眩い光が一帯を包む。
眩しいが暖かい、まるで草むらの上で日向ぼっこしている気分になった。
「3パーセント、クリア!!じゃあ、次は45パーセントで頼むよ!!」
少しだけ出力が上がる。
少し暑くなった、まるで、真夏日だ。
心なしか、晴の周りに橙色のオーラが発生していた。
「45パーセント、クリア!!それじゃあ、100パーセントいってみよう!!」
そう言うと、晴の握る結晶は橙色に強く輝いた。
まるで太陽を直接見ているような感覚がした。
「装置、欠損0、エネルギー変換率100%……。やった!!出来た!!成功だ!!」
俺は、画面を確認し、跳び跳ねて喜んだ。
晴は、結晶化を解除して、その場に座り込んだ。
「やったな、折。遂に結晶エネルギーを貯め込む技術の完成だ……、俺は疲れたから、一旦寝る……」
晴はそのまま倒れて眠ってしまった。
「ありゃりゃ、無理させ過ぎたかな……」
俺は晴を抱えて、ラボの奥にある仮眠室に晴を運んだ。
「さてと、あとはこいつを完成させるだけか。晴が満タンにしてくれたおかげで、実験する分には、十分すぎるエネルギーが集まってるんだよな……」
エネルギー充填率172%、予備のタンクにも75%ほど充填されているのだ。
「設計通り作ったが、やっぱり、結晶を使えた方が晴やみんなが使いやすいかな……」
そして、俺は設計図に加筆修正した。
当初の予定は、装置から充填して、バッテリーもどきで貯め込んで使えるようにする設計にしていたが、結晶と同じ形のエネルギーパックを変更し、圧縮したエネルギーを解放するタイプに切り替えた。
そして、予備タンク内25%程のエネルギーを使用して、エネルギーパックを完成させた。
「出来た、リロード式は、素材をたくさん用意する必要があるから、あまり好みじゃないが……」
出来上がったそれを持ち上げ、俺は、装置の充填口に数個ほどエネルギーパックを差し込んだ。
「あとは、圧縮がどこまでいけるかだな……。結晶エネルギーは、空気中に溶けやすく、少しでもパックが破れると全て一瞬でなくなってしまうからな……」
バッテリーパックを全て充填し終え、俺は、カップ麺にお湯を入れた。
「3分、何も考えずただひたすらにボケーッとする時間を創る。そうすれば、脳がリセットされて気持ちがスッキリする。いいアイデアはいいリセットから生まれるのだ!!」
ひとりで呟きながら、一日を振り返る。
頭の中でみんなの嘲笑う姿がふとした瞬間に過ぎる。
大丈夫、そんなの幻覚だ。
気にしちゃいけない。
何があっても俺は俺だ。
「いつか俺にも発現してくれるのかな、
ピピピッピピピッ
とタイマーの音が鳴る。
俺は割り箸を取り出し、フタを開け、軽く麺を混ぜる。
1口スープを飲み、麺をすする。
「……熱い」
けど、
「美味しい、いつも通りの美味しさだ。」
そのまま一気にすする。
そして、最後の一滴までスープを飲み干す。
「身体に悪い事は分かってるけど、やめられない美味しさ……」
カップと箸をゴミ箱に突っ込んだ。
俺は携帯型の端末を取り出し、ネットの情報に目を向ける。
「諸外国が我が国へ向けて話し合いをしようとしていたが、この度、話しても無駄だからという理由で宣戦布告を行った……」
ん?
なんだろう、この現状とこのタイミング……
「嫌な感じがする……」
その一言と同時に、地上からとてつもない揺れが起きた。
「な、なんだ!?折、生きてるか?地震か!?」
「戦争が始まったんだ、諸外国と俺達の国の」
「はっ!?ふざけんな!!俺はまだ死ねないぞ!!」
「とにかく、ここは地下だし、なんなら、防爆にもなってるし、食糧の備蓄もある。それに……」
俺は奥の扉を開いた。
「ここから緊急時の地下シェルターに行くことも出来る。だから、戦争に参戦する必要は無いんだ」
「でも、みんなが!!」
「人の話を最後まで聞け!!ここから地下シェルターに行けるから、みんなを地下シェルターに避難させることが出来ればみんな助かる!!」
「じゃあ、俺達がやることは……」
「みんなの避難と相手の消耗を待つだけだ」
「耐久戦ってことか、やってやろうじゃねぇか!!」
「じゃあ、俺は通報機でみんなに呼びかける。お前は外で呼び掛けを頼む!!危なくなったら、逃げろよ」
「分かってるよ、死ぬんじゃねぇぞ」
「お互いにな!!」
そして俺達は互いに出来ることを始めた。
俺はネットを通じて緊急避難警報と避難場所が地下シェルターという事になってる事を確認し、発報した。
外では、
「みんな、急いで地下シェルターに逃げろ!!」
と言いながら、駆け回る晴。
シェルター内では、
「皆さん水と食糧はここに沢山あるので、心配しないでください!!ブランケットと区画は、この機械で発券された番号に従ってください!!」
ラボには、食糧やブランケットを取りに行くだけになってしまった。
やはり、戦争ということで怪我人が出ることは当たり前で、治療部隊も必要なのだ。
「青結晶の結晶を持ってる方、治療をお願いしたいので、至急入口横の応急処置所まで集まってください」
アナウンス後、10程の青結晶持ちが集まった。
「では、それぞれ結晶の力を使用して負傷者の手当をおねがいします。浅い傷はガーゼとこちらの万能軟膏で、傷が深い人だけ結晶を使ってください。力の使い方は、結晶を握りしめ、光が出たら、その光を負傷者の傷口に当ててください。数十秒で深い傷口は塞がるので、塞がったら、万能軟膏とガーゼを使用してください。また、骨折の方や、手足が欠損した方には、完治するまで光を当て続けてください。それでは皆様、よろしくお願いします!!」
そして、治療部隊は、徐々に避難してきた青結晶の方が増える度に人員が増え、数百人ほどに増えたが、互いに治療方法を教え合い、怪我人を直ぐに治療することが出来た。
「さてと、あとは……」
俺はラボに戻り、晴と連絡を試みる。
「晴、聴こえるか?」
『ああ、バッチリだ!!ところで、地下シェルターは、大丈夫か?』
「こっちも一通り大丈夫だ。そろそろ日が暮れる。今日はもう攻めて来ないから、帰って来い。あと、地下シェルターには、全員避難できた。あとはお前だけだ」
『戻りたいのは山々なんだが、今逃げてるけど、ずっと追われてんだよ。コイツら何なんだ、結晶使ってもプツッ』
「晴?おい晴っ!!」
『お前がコイツの仲間か。よくもやってくれたな』
誰だ、コイツ……。
俺は冷静に分析を始める。
『私はダーウィン大佐、お前達結晶奴隷を刈り取るエリート集団のヘッドだ』
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