二話
そして今日はリディア・クラウンとウェンディ・ベルの婚約する日になった。
その日の朝、ウェンディは珍しく、キラキラな目をし、そわそわし、落ち着きなく動きまわっていた。普段の彼女なら絶対にありえないことだった。
「(これでやっとリディア様を私のものにできる!)」
リディアが浮気しているときから。ウェンディはずっと考えていたのだ。最初はリディアの浮気に腹を立てていたし、すぐにでも問い詰めたかった。
しかしウェンディはすぐ思い直した。だって、浮気されたのはウェンディが悪いから。自分に魅力がないから……とそう思い直し、自分を変えようと努力してきた。外面も内面も磨いて、誰よりも素敵な女性になろうと頑張った。
しかし、リディアはウェンディを見てはくれなかった。それどころか女遊びが激しくなった。他の令嬢達にも手をだし、遊んでいた。それに気づいた時、ウェンディの心の中にどす黒い感情が生まれた。
ーーなんで私だけ見てくれないの? どうして私だけ愛してくれないの? そんな疑問や不満が渦巻いていた。周りには相談する相手がいないウェンディにとって、それはとても苦しいものだった。
しかし、もう大丈夫だ。これからはリディアは自分のものになる。流石に、婚約者がいる状態で他の女性に手を出すことはしないだろう。今までのことは目を瞑ろう。許してあげよう。これから一緒に過ごす時間を楽しめばいいんだ。
ウェンディはそう考えていた。
実際、結婚式も無事に開催したし、リディアも誓うと言ってくれた。キスも、誓いの言葉も、指輪の交換も済ませた。あとはベッドの上で楽しむだけだ。ウェンディは期待していた。これからの生活に。
実際、最初の一週間は幸せだった。リディアと一緒にいる時間は楽しくてしょうがなかった。こんな時間が永遠に続けばいいなぁと思っていた。
しかし、そんな考えは、あっという間に消え去った。きっかけは、とあるパーティーだった。ウェンディはその日、リディアにエスコートされながら参加していたのだが……
「ウェンディ嬢。僕と踊って頂けませんか?」
そう言って押し寄せてくるご子息。彼らをさりげなくあしらいながらも、ウェンディはとてもイラついていた。
結局、その日のダンスパーティーでは一度もリディアと踊ることはなく、終始邪魔が入り続けた――。
△▼△▼
「(やっと解放される……)」
ウェンディは疲れ切っていた。あれから、何時間もの間ずっとダンスをしていたのだ。それも全部男からの誘いである。正直うんざりしていたが、なんとか乗り越えられた。
そしてパーティももう少しで終わり。今度こそリディアと二人きりになれる!そう思ったがリディアはもうパーティ会場にはいなかった。
なので探しにいくことにした。しかし、それは間違いだった――。
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