第三幕ー48『第十一場』

 推定日時。二月十七日。十九時前後。


 いつものように仕事を終えた美咲が、地下室に入って来た。清花がこの部屋に監禁されてから二週間が過ぎた。綾芽に『反省文』を宿題として出されたことにより、以前ほど、ここでの生活が苦ではなくなってきていた。


『何事もね、経験を重ねれば慣れるものなのよ』


 監禁される前に、綾芽が言っていた言葉が清花の脳裏をかすめた。監禁生活を強いられ理不尽な暴力を振るわれる日常に慣れてきている自分を客観視すると、何だか、笑いが込み上げてきた。そんな清花を見ていた美咲が、訝しそうな顔をして、

「アンタ、頭おかしくなったん?」

 と言った。この部屋に閉じ込められてから、監視役の美咲とミヤマは、必要以上の言葉を発することがなかったし、清花から話し掛けても返答はなかった。女王様からの指令なのだろう。

「私と口きいて大丈夫なの?」

「多少ならかまわんと思うけど。べつにアンタと話すことを禁じられているわけではないんよ。ただ、アンタと話すと情が移りそうでな。アンタ、昔の私そっくりなんだもの」

「そうだったの? 私、てっきり、綾芽に命令されているのかと思ってた」

 そう言うと、美咲の表情が曇った。

「ちょっと、アンタ、綾芽さんと私の関係を誤解してるみたいだし、丁度、私も飽き飽きしていたところだから、暇つぶしにちょっと昔話でもするわ」

「奇遇ね。私も丁度退屈していたところなの。ぜひ聞かせてほしいわ」

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