第三場ー47

「なんなの、これ?」

「表題のとおりよ。子どもの頃、親や学校の先生に書かせられなかった? まあ、私は良い子だったから書いたことないけどね。いちおう、『反省文』って書いたけど、テーマに沿った内容が書かれていれば、それが、フィクションであってもノンフィクションであっても構わないわ。嘘でも、願望でも、妄想でも、あなたが好きなように書いたらいいわ。私はすべてに目を通すけど、その内容が真っ赤な嘘であっても、私は赤を入れたり書き直しを要求したりしない。約束するわ」

「なんか良くわからないけど、いいわよ。退屈で死ぬところだったから丁度いいわ。で、テーマは何なの?」

「『私と、悠介と、綾芽』。私小説を書くつもりで、幼少期からあなたが憶えていることすべて書いてちょうだい。ただし、私と九年ぶりに再会の約束をするところまで。それ以降のことを書いたら、すべて跡形もなく証拠隠滅するからよろしくね」

「わかったわ。私があなたに殺されたら、出版されるのかしら?」

「アンタって、本当、弱っちいんだかタフなんだか良くわからない女よね。じゃあ、私、帰るけど……ひとつだけ忠告! 変な気だけは起こさないでね。私、バッドエンドのお話は好きじゃないの。じゃあね!」

 そう言って綾芽は部屋から出て行った。その日を契機に、綾芽はストレスが溜まる度にこの部屋に来て清花を殴った。辛いのは殴られている清花の方なのに、何故か綾芽はいつも苦しそうな表情をして清花を傷めつけていた。

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