第三幕ー27
「私もだてに、あのスタッフの入れ替わりが激しい女の戦場で六年生きてきたわけじゃないからね」
そう言って、美咲は照れ臭そうに笑った。
「ところで、私が緑川さんに睨まれた時かかってきた紫先生のお電話は偶然だったんですか?」
「ああ、あれね。清花が緑川に捕まってて、ちょっとヤバそうだったから、即綾芽さんに連絡入れたんよ。そんで、綾芽さんから紫先生に、緑川宛に至急電話するようお願いしたんよ」
「そうだったんですね! ありがとうございます! あの時はもう生きた心地がしなくて。なんてお礼を言ったらよいものか」
「少ない脳みそ使って考えた作戦や。感謝してや」
美咲の豪快な笑いにつられて清花もついつい笑ってしまった。その後は、終電まで美咲といろいろなことを話した。清花は、自分と綾芽が幼馴染であることも、悠介との夫婦関係が崩壊していることも、すべて美咲に打ち明けた。彼女は信用に値する人間であり、万が一にも自分のことを裏切ったりしないと思ったからだ。美咲は清花の話を親身になって聞いてくれ、彼女なりのアドバイスもしてくれた。幼馴染である悠介と綾芽は別として、これまで友達がいなかった清花にとって、美咲の存在はとても大きく温かかった。帰りの電車の中で清花は、綾芽と美咲との関係を訊くのを忘れていたことに気付いた。まあ、また、いつでも訊くチャンスはあるだろうと思いながら心地良い眠りに誘われた。清花はこのことを後に後悔することになる。
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