第三幕ー22
「私も、あなたと一緒だわ。あの女みたいにだけは成りたくないって、いくら抗ったところで、私の躰半分を占めているあの女の血は一生私に付き纏うのよ」
「本当、俺たち『運命共同体』だよな」
悠介は、自嘲気味に嗤いながら話を続けた。
「それで、『舞台』はうまくいっているのか?」
「ええ。おかげさまで順調よ。あの子、面白いくらい、私の思惑どおりに動いてくれるんですもの。就職先が決まらないからって、私に助けを求めてきたわ」
「綾芽は、アイツの新しい依存相手に選ばれたってことだな」
「そういうことね。うちで経営しているネイルスクールに受付事務として雇ったわ」
「アイツに、受付事務なんて務まるかねえ?」
「流石に社長の私のコネで入社しておいて辞めるとか無理でしょ? それに、万が一の時のために、私の手下に指示出しておいたから大丈夫だと思うわ」
「さすが、抜かりねえな」
「当たり前でしょ? 一生に一度の大舞台ですもの。失敗は許されないわ。それはそうと、悠介、いつまであのボロアパートに住むつもりなの?」
「ああ、そう言えば、大家のババアが家賃払えってうるせえんだよな。ホームレスの段ボールハウスに毛が生えた程度のボロ屋のくせによっ」
「何カ月滞納してるの?」
「三カ月だな」
「ねえ、それ私が出すから、悠介ここに一緒に住まない?」
「えっ? いいのか?」
「そのつもりで、このマンション契約したの。それとも、『奥様』が帰って来た時のためにあのボロアパートで待つ?」
綾芽は嫉妬の色を帯びた瞳で悠介を見つめた。
「バカ言ってんじゃねえよ! 俺が愛しているのは、昔から綾芽だけだよ。命を懸けてもいい」
「私もよ」
そのまま二人は、ソファの上で互いの躰の熱を感じながらひとつに溶けていった。
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