第三幕ー9
宮間の顔が、天使から悪魔へと変貌した。その狂気に満ちた顔に慄きながらも、悠介は、この男が紡ぐ言葉に惹き込まれていった。
「『消す』って、つまり、『殺す』ってことっすか?」
悠介が恐る恐る訊ねると、宮間は、ふふっと微笑んだ。
「物騒なこと言いますね。何もナイフでぐさりと刺しなさい、と言ってるわけではないのですよ。それじゃあ、松永さん、一生鉄格子の中で暮らさなくちゃならないじゃないですか? 彼女と一緒になるどころか永遠に離れ離れになっちゃいます。まあ、一番、平和的な解決方法は、奥さんが素直に離婚届にサインをしてくれることですが、そう易々とはいかないのでしょう?」
「たぶん」
「それなら、奥さんが自ら『死』を選んでくれるように仕向けるか……まあ、あなたが本気で『彼女』と一緒になりたいと思い『彼女』もそうなること願うのであれば、回りくどいやり方ですが、打つ手がないわけではありません」
悠介は、ごくりと唾を飲み込んだ。
「それは、いったい、どんな手なんですか?」
「それは、あなたと『彼女』が覚悟を決めた時にお教えしますよ。今はまだ、その段階ではないのでしょう? あなたの心に迷いが見えます。おすすめはしませんよ。たとえその願いが叶ったとしても、決して幸せにはなれません」
宮間は、少し間を置いてから、
「私のようにね」
と呟いた。その時、悠介の目に映った宮間は、美しい死神のようだった。
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