第三幕ー5

「隣、いいっすか?」

 男は、この時もスマホに夢中になっており、飛び跳ねるようにして驚いていた。初めてまじまじと見た男は、芸能人みたいに綺麗な顔をしていた。

「あっ! お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ありませんっ! お顔は存じておりましたが、こうして話し掛けて頂けるとは夢にも思わなかったもので」

 その容姿に相応しい綺麗な声で男は、どうぞ、どうぞと言いながら男の左隣の椅子を引いてくれた。悠介が「失礼します。師匠」と言いながら腰掛けると、男は「何ですか? ”師匠”って」と言いながら楽しそうに笑った。唇の間から覗く白い歯が、真夏の光に反射して眩しかった。悠介が、どんなに研究しても勝てず、負けが込んで困っている旨を相談すると、男は、「この後、まだ打ちますか?」と尋ねてきたので、「もちろん!」と悠介は答えた。腹を満たした二人の男は連れ立って、戦場へと戻った。


「今、あなたが打っている台はどれですか?」

 と、男が訊いてきたので悠介は、男を台まで案内した。男はデータランプをぱっと見ただけで、

「この台はやめた方が良さそうです」

 と言った。午前中にそこそこ当たりを出していた台なのでまだまだ稼げると悠介は思っていたのだが、ここは素直に”師匠”の指示に従い、台移動をした。男が悠介に勧めた台は、どう見てもハマり台だった。半信半疑の顔をしている悠介を見て、男は、

「ちょっと騙されたと思って打ってみてください。もしハズレ台だったら、損失分私が負担しますよ」

 と言った。悠介がその台に座り、十回転したところで当たりを引き、そのまま確変に入った。信じられない奇跡に悠介は目を丸くした。右隣の台で打っていた男の肩を叩き、ガッツポーズをして見せると、男は嬉しそうに微笑んだ。大勝ちした二人は、換金所で特殊景品を現金に換金した。久しぶりに財布が潤った悠介は、

「あの、もし都合悪くなければ、これから軽く飲みに行きませんか? 勝たせて頂いたお礼に奢らせてくださいっ」

 と男に言った。

「そうですね。折角ですから、親睦会を兼ねた祝勝会をやりましょうか?」

 と、男は答えた。

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