第二幕ー39

『この子は、大人になったら、きっと、超一流のネイリストになるに違いないね!』


 トーランスに暮らしていた頃、ママと一緒に行ったネイルサロンでネイリストさんに言われた言葉がリアルに再現された。私は、くしゃくしゃになった紙をアイロンをかけるみたいにして手のひらで伸ばし、第一志望の欄に「カリスマネイリスト」と書き込んだ。

 高校卒業後、私は、ママが経営する「北原紫ネイルスクール」に入学した。トップネイリストになるという目標を持つことで、私は、理性を維持していた。ネイルに没頭している間、私は、悠介のことや、過去の忌々しい記憶を封印することができた。ネイル業界の重鎮である北原紫の娘ということで、はじめは色眼鏡で見ていた子たちも、技術を身に着けようと貪欲に取り組み、めきめきとその才能を発揮していく私を見て、私に対する見方を変えた。気付けば、私は昔のように皆の輪の中心にいた。私は、息つく暇もなくネイルにのめり込み、充実した日々を過ごしていた。

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