第二幕ー27
「ということなんだが、君たち二人は、山中さんから何か悩みの相談を受けたりとかしていないかい?」
「特にないですね。確かに俺たちは幼馴染ですが、中学に入ってからは皆クラスも別々ですし、俺は、テニス部とテニススクールの掛け持ち、北原さんは、先生もご存じの通り、生徒会役員の活動やら習い事やらで忙しくて、同じ学校に通っているとは言え、皆、生活サイクルはバラバラです。清花は、三沢先生が顧問をされている『絵本部』に所属していますよね? 『絵本部』内での人間関係などに問題はないのですか?」
悠介も、この女教師に苛々しているようだ。殆ど詰問に近い訊き方をした。
「え、絵本部は、週二回しか、か、活動していませんし、部員もお、おとなしい子ばかりで、に、人間関係に問題があるとは、お、思えませんっ!」
「ありえませんっ!」「思えませんっ!」この言葉は、このうじうじした女教師の希望的観測にすぎないことを如実に表現しており、彼女が今回の件に関して何の働きかけもしていないことを証明したに過ぎなかった。その後、話は、女教師以外の三人で進められ、私たちは、清花の家族には絶対に内密にという約束を沖田先生と取り交わした上で、清花が、妹の晴花のことで、もしかしたら家庭内で肩身の狭い思いをしているかもしれない、という山中家の事情を話した。話が一段落した時にはもう、町はすっかり夜闇に包まれていた。沖田先生は、悠介に私を家まで送って行くようにと言って、白髪交じりの髪をくしゃくしゃにしながら、三沢先生と職員室に戻って行った。
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