第二幕ー23
翌日、私は、病院で診察を済ませてから登校した。主治医は、過労とストレスが原因であって深刻な病気ではないという診断を下した。倒れた時に頭を打ったかもしれないので念のためにMRIの予約を入れたものの、脳を損傷したのであれば出るはずの症状が見られなかったので、本当に、念のための検査だった。ママは、私が弱音を吐いた時に厳しいことを言って私を追い込んでしまったことを何度も何度も謝っていたが、私は、ママが言ったことは正しいと思ったし、私のことを思い、心を鬼にして言ったことも理解していた。だから、自分を責めるママに対し、
「ママ、今回はたまたま運が悪かっただけ。自分を責めないで」
という言葉を掛けることができた。担任の
「綾芽、もう、学校来て大丈夫なの? 無理してない?」
真奈が心配そうな顔をして訊いてきた。皆一様に同じような表情をしている。
「心配かけてごめんね。まだこれからの検査もあるけど、お医者さんが、深刻な病気ではないでしょうって言ってた」
「そっかあ。良かったあ。でも、無理はしないでね。綾芽は頑張り屋さんで弱音とか吐かないから心配だよ。ていうか、気付いてあげられなくて本当にごめんね」
真奈は今にも泣きそうな顔をしていた。
「そんな顔しないで。これからは、ちゃんと自分の健康管理もするから、ねっ!」
そう言うと、皆の顔にほっと安堵の色が浮かんだ。
「ところで、昨日の投票結果ってもう発表された?」
皆の反応を見てすぐにわかってしまった。やはりダメだったか、と。全校生徒の同情を誘い、判官贔屓での奇跡の勝利もあるかもと期待した自分に苛立ちを感じた。これでは、まるで清花みたいじゃないか、と。
「次期生徒会長は五組の
真奈が笑顔で言った。
「そうなんだ。ありがとう! もし任命されたら、喜んでお受けしたいな」
これは本心ではなかった。二位なんて嬉しくなかった。それでも、この場においては慎ましやかな発言をすることが皆の好感度を上げるのに最適だということは本能で分かっていた。私は、いつも皆の輪の中心にいる存在だったし、これからもそうありたいと思っていた。皆が私をちやほやしてくれる、憧れてくれる。私が主演女優でいられる間は、幼少期の虐げられていた無力で惨めったらしいちっぽけな私は完全に姿を消してくれた。
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