第二幕ー22


 その後のことは何も覚えていない。気付いた時には、私は保健室のベッドに横たわっていて、傍には悠介がいた。付き添い用のパイプ椅子に座ってうつらうつらと居眠りをする彼を見て思わず笑みがこぼれた。状況を理解するために、私は一つ一つゆっくりと記憶を呼び起こす作業をした。


「ああ、私、倒れたのか……」


 無性に自分に腹が立って、悔しく、情けなかった。きっと、私は、生徒会長にはなれないだろう。こともあろうに全校生徒の前で倒れるなど。最低! 最悪! 自分の失態に涙を滲ませていると、いつの間にか目を覚ましていた悠介が、

「オマエ、何でもかんでも、頑張り過ぎ」

 と言って、私の頭をぽんぽんと撫でた。

「くやし……」

 その後は、嗚咽で言葉を繋げることができなかった。悠介はそっと立ち上がり、私の唇に彼の唇を重ねた。彼の温もりが私の中に入ってきた。

「ば、ばかっ! 私、めっちゃ鼻水とか出てるんだけど!」

「泥塗れよりはマシだろ?」

「確かに!」

 私たちはお互いの顔を見合わせて笑った。そして、再び、互いの唇を重ねた。間仕切りのカーテンに人影が映し出されたような気がした。西の空の端に僅かに残っていた残照が、スポットライトのように二人の影を照らし出していた。

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