第二幕ー16

「うちの家族は、とうの昔から、ずっとぶっこわれてるんだよ。母さんもねえちゃんも俺も、みんな、アイツのイライラをぶつけられてるオモチャだ。俺はまだ、アイツをぶっ殺す力がねえ。早く大きくなって強くなって、アイツから、母さんとねえちゃんを守ってやりてえ……俺……何もできねえよ、男のくせによ、くやしい、くやしいよ……」

 そう言って、悠介は右腕で雨と涙が一緒くたになった泥水を拭った。

「わかるよ」

「オマエに? お嬢様育ちのオマエに、俺の気持ちがわかるもんか!」

 私は、そっと躰を起こしてブラウスのボタンを外し、脱ぎ捨てた。

「バ……オマエ、何やってるんだよ? 頭おかしいのか?」

「ちゃんと見て! 目を逸らさないで! 私は、私の肌を見るまいと目元を隠す悠介の手をそっと払い、躰に残った傷跡を見せた。

「誰にやられたんだ?」

 私が悠介に訊いたように、悠介も私に訊いた。

「私を産んだ女よ!」

「えっ?」

「今のママとは血のつながりはないけど、私の本当のママは今のママだけよ」

 雷の音が大きくなって、真っ黒な空に亀裂が走った。ここで二人、雷に打たれ死んでもいいと思った。

「俺たち、『運命共同体』なのかもしれないな」

 地面が裂けるような轟音が鳴り響いた。

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