第二幕ー16
「うちの家族は、とうの昔から、ずっとぶっこわれてるんだよ。母さんもねえちゃんも俺も、みんな、アイツのイライラをぶつけられてるオモチャだ。俺はまだ、アイツをぶっ殺す力がねえ。早く大きくなって強くなって、アイツから、母さんとねえちゃんを守ってやりてえ……俺……何もできねえよ、男のくせによ、くやしい、くやしいよ……」
そう言って、悠介は右腕で雨と涙が一緒くたになった泥水を拭った。
「わかるよ」
「オマエに? お嬢様育ちのオマエに、俺の気持ちがわかるもんか!」
私は、そっと躰を起こしてブラウスのボタンを外し、脱ぎ捨てた。
「バ……オマエ、何やってるんだよ? 頭おかしいのか?」
「ちゃんと見て! 目を逸らさないで! 私は、私の肌を見るまいと目元を隠す悠介の手をそっと払い、躰に残った傷跡を見せた。
「誰にやられたんだ?」
私が悠介に訊いたように、悠介も私に訊いた。
「私を産んだ女よ!」
「えっ?」
「今のママとは血のつながりはないけど、私の本当のママは今のママだけよ」
雷の音が大きくなって、真っ黒な空に亀裂が走った。ここで二人、雷に打たれ死んでもいいと思った。
「俺たち、『運命共同体』なのかもしれないな」
地面が裂けるような轟音が鳴り響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます