第二幕ー13
「ねえ……あなたのなまえをおしえて?」
「おれは、ゆうすけ! まつながゆうすけ! よろしくな! きみは?」
「わたしは、あやめ! きたはらあやめ! パパのおしごとで、ずっとアメリカにすんでいたから、日本でくらすのははじめてなの。まだ、おともだちがいなくて。ゆうすけがおともだちになってくれたら、わたし、うれしいっ!」
「もちろんだよ! おれたちは、もう、ともだちだっ!」
ゆうすけは、にかっと笑った。
「ねえ、あの女の子もゆうすけのおともだち?」
私の視界には、ことの一部始終をおどおどしながら心配そうにみつめていた女の子の姿が映っていた。悠介と一緒にいた女の子だ。
「ああ。あの子は、『さやか』っていうんだ。おれとおなじマンションにすんでるともだちさ。きがよわいから、おれがまもってやってるんだ。ひとみしりする子だから、あとで、あやめにしょうかいするね」
心に黒い靄がかかった。あの子は弱いから悠介に守ってもらえるの? そんなのずるい! 私だって弱いのに命懸けで闘ったんだ! あの子は、離れた安全な場所から、ずっと何もせずおどおどして様子を見てただけ! ずるい、ずるい、ずるい、ずるい! ふと、視線を飛ばすと、さやかは、じとっとした目で私を睨みつけていた。彼女の目も笑っていなかった。あの女と同じ目。ああ、そっか。彼女も、悠介のことが好きなんだ。
「ごめんね。わたしもほしくなっちゃったの」
そう呟くと、悠介は勘違いして、
「そうだなっ! のどかわいたよなっ! かおあらって、ジュースでかんぱいするかっ!」
とはしゃいだ。「そうだねっ」と言って、私もはしゃいだ。
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