第二幕ー4
調べによると、有名なネイリストであり、ネイルスクールも経営している北原綾芽の母、
「そうか……犬が飼い主を選べないということは、人間の子どもが親を選べないのと同じことなんだろうな。まあ、人間の子どもが云々の方は、俺がとやかく言う資格はないがな」
「そうね……」
そう言って、北原綾芽は微笑んだ。
「なあ、オマエにとって、松永清花や松永悠介は、どんな存在だったんだ?」
「どんなって? 大切な幼馴染よ」
「じゃあ、どうして、その大切な幼馴染を、オマエは手にかけなきゃならなかったんだ?」
中島の問い掛けに対して、北原綾芽は口を噤んでしまった。長い長い沈黙の時間が流れた。ちょっとがっつき過ぎたかと中島は後悔した。開きかけていた北原綾芽の心を、再び閉ざしてしまった。中島は自分の眉間に手を当てた。また溝が深くなったような気がした。今日も彼女から自供を引き出すことは難しいだろう。中島が諦めかけた瞬間、北原綾芽の形の良い唇から言葉が発せられた。
「私たちはね、『運命共同体』だったのよ……」
「どういう意味だ?」
「話せば長くなるわ」
「構わん。聞かせてくれねえか? オマエさんの話をよ」
こうして、北原綾芽は、唐突に自供を始めた。
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