第一幕ー17
私の四歳年下の妹の
「自分の妹が苦しんでいる時に、友達と遊びに行くだなんて、なんて薄情な子なの?」
母は眉根に皺を寄せながら吐き捨てるように言った。正直、妹のことなんてどうでも良かった。私は、悠介と綾芽を二人きりにさせたくなかった。どうせ、父も母も妹のことばっかりで私のことなんて愛しちゃいない。どっちが薄情だ? どうせ嫌われているのなら、母の嫌味なんて無視して悠介に会いに行けば良かった。なのに、できなかった。これ以上父にも母にも嫌われたくなかったのだ。結局、私は、妹のせいで、小六の夏休みは、一度も悠介に会いに行けなかった。そして、私が不在の間、悠介と綾芽は、私に内緒でテニススクールの見学に行ったりしていたのだ。他にも、私の知らない二人だけの思い出があるに違いない。私は、喉にせり上がってくるものを堪えながら、
「いいよ。入部するかどうかはわかんないけど」
と、偽りの笑顔を拵えながら言った。綾芽の顔に安堵の色が浮かんだ。
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