第13話
僕は異を唱えた人物を見て、渋い顔になる。
ダリアン・ローレンス、ローレンス家の跡取りである人物だ。ライアム家に長く仕えているローレンス家の人物で……典型的な貴族意識の塊のような人間だ。親であるライアム伯爵はそんな人物ではないのだけど。
そして僕はこいつが大の苦手だ。向こうからしたら生まれも分からないような人間がライアム家の跡取りであるアーシャと仲良くしているのが気に食わないらしい。僕がライアム家に来た時からなにかと張り合おうとしてくるのだ。模擬試合をしたこともある。僕が勝ったが、その結果が受け入れられないと取り巻きを使って僕に嫌がらせをしてきたりとしつこいのだ。
あまりに僕への嫌がらせが酷かったのでアーシャが窘めたこともある。それくらい僕に敵対意識が強い人物だ。
「ダリアンか、なにか不満でもあるのか?」
公爵様がダリアンに問いかける。ダリアンはこちらーー正確には僕のほうを見ていたーーを向いて公爵様の問いかけに答えだした。
「彼女は確かに学院時代に王国の王都を襲った古竜を王女殿下やアーシャ様と強力して倒し、大きな功績を持っています。しかし、彼女は失礼ながらどこの生まれか分からないという大きな問題があります。ライアム家という名門に生まれの分からない人間を正式に迎え入れられるというのはいささかやりすぎではないかと思うのです」
「ダリアン、現在王国ではなるべく能力のあるものをなるべく登用していくという方針を取っている。私もその方針に賛同している身だ、ライアム家自身が他の家にこの方針をとることを示すために、ラナのような身分はないが実力がある者を養子として迎えいれることにやりすぎということはない」
「おっしゃることは確かです。ですが養子をとるなら彼女以外にも良い人間はいるでしょう。なぜラナなのですか? 彼女以外にも身分がしっかりしており、実力のある方々はたくさんいらっしゃるはずです」
うーん、ここまではっきり言い切られると渇いた笑いしか出てこない。僕に敵対意識があるとは言え、皆が集まるこの場でここまで言うのか。
僕は内心呆れながらダリアンの言葉を聞いていたが、公爵様は動じていない。ダリアンの言葉を聞き終わると公爵様が意見を述べられる。
「ダリアン、お前は古竜を討伐したような人間と同じような実力の人間がそうそういると思っているのか?」
公爵様の言葉にダリアンも黙ってしまう。災いと言われる古竜を倒せるものなど王国広しと言えど、そうそういないからだ。これを言われると僕に敵対意識を持っているダリアンと言えど黙らざるを得なくなる。
「それにラナは学院時代に王女殿下とアーシャと並んで筆記のほうもトップの実力だったのだぞ? これほどの実績を備えた変わりの人物がいるなら私に教えて欲しい。こちらが知りたいぐらいだ」
公爵様の反論を聞いたダリアンは黙り込んでしまう。なにか反論しようとしているがいい内容が思いつかないのか言葉にならない。
「さてまだなにかあるなら聞こう、ダリアン」
公爵様の言葉にダリアンはなにも言わない。いい反論が思い浮かばなかったようだ。
「……公爵様の申されたことに異論はございません」
ダリアンは納得がいかない表情をしながらも公爵様の言葉に反論できずについに降参した。彼はそのまま着席する、その時に僕を睨みつけ、敵意のある視線を送ってきた。
(本当にしつこい奴だなあ、まあ敵意を向けられるのは慣れてるけど)
前世でもなにもないところから剣や戦いの腕だけで成り上がり女王陛下の側に仕えた僕に対して嫉妬や恨みの感情を向けてくる人間はたくさんいたからダリアンから向けられる敵意ぐらい大したことはないのだけど。
(でも敵意を向けられるのはやっぱり良い気分じゃないね)
などと思いながら僕はダリアンのほうを見る。彼は公爵様に言われて大人しく席に座ったがその表情には僕がライアム家に養子入りすることが気に食わないという感情がありありと浮かんでいた。
「他に異論があるものはいるか?」
公爵様が皆に問いかける。もう意義と唱えるものは誰もいなかった。
「では、今日よりラナはライアム家の一員となる。皆彼女を支えてやって欲しい」
この日、僕は正式にライアム家の養子となった。
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