死亡と、沈黙
*
ダンッ、という音が皆の心を貫いた。聞こえた瞬間に、自分なのではという恐怖で心臓が跳ね、そして一瞬後に四人の胸は不運を引き当てたのは誰かという疑問で一杯に鳴る。
「──っ、ぁ、……」
それは小さな声にならない呟き。ぐらり、と頭が揺れた。次いでゆっくりと、ゆっくりと倒れる。
こめかみから流れる血。鼻や耳からも遅れて血は垂れ始め、彼は目を見開いて膝を突き、そして床の上に突っ伏した。
「──あ、ああ、っあああ!?」
先程まで生きて喋っていた者が血を流し倒れるという体験に、クリスタリオはただがくがくと震え硬直を解けないでいる。隣のモリオンは彼を凝視して息を飲み、アメジスタンは安堵と苦悩の入り交じった複雑な表情で舌打ちした。ローゼズは魔銃を思わず取り落とし、ガチガチと歯を鳴らしている。
──そう、一発目の銃弾で倒れた者は、シトリーだった。
床に伏したまま動かないシトリーに皆は立ち尽くしていたが、ようやく我に返ったアメジスタンが舌打ちを零し、ゆっくりとシトリーに近寄った。アメジスタンはうつ伏せに倒れたシトリーの身体を引っ繰り返そうとするものの、ぐったりと力の入っていない人間の身体というのは酷く重く、表情を歪めアメジスタンは声を上げる。
「おい、ボサッと見てるだけじゃなくて手伝ってくれってば! いつまで震えてんだっての!」
「あ、ああ……」
慌ててモリオンが近寄り、手を貸した。ようやくシトリーを仰向けに寝かせ、二人はふうと息をつく。
「流石に……即死みたいだね」
一度は床にへたり込んだローゼズがそろそろと這い寄り、シトリーの息や脈、心音を確かめる。治癒の魔法に長けたローゼズには僅かながら医療の知識もあり、その使命感からか率先してシトリーの死を確認したようだ。
「そうか、やっぱシトリー、死んじまったんだな」
気が抜けたようにアメジスタンが呟く。じわじわと実感を伴った言葉は壁に染み入り、そして残された全員が口を閉ざした。
沈黙が落ちる。誰もが視線を彷徨かせ、座り込んだまま口を引き結んでいた。誰も何も言えず、これからどうするか考えあぐねているようだった。
砂時計の砂はもう半分程に減っていた。カウントを示す数字は五となっている。
──そしてやはり、この沈黙を破り再び真っ先に動き出したのはアメジスタンだった。
肩を落としていたアメジスタンはハーッと大きく息を吐くと、うなだれていた首を起こしごそごそと行動を開始した。寝かされたシトリーの傍へとにじり寄ると、その手に握られたままだった魔銃をもぎ取ったのだ。
「え、アメジスタン!? その魔銃どうするの」
驚きにクリスタリオが声を上げる。するとアメジスタンは皮肉げにニヤッと笑い、シトリーの分の魔銃を右手に構えた。
「ああ、こうやって使おうってね」
そしてアメジスタンはシトリーの魔銃をモリオンの後頭部に押し当てる。
「な、何してるのアメジスタン!」
ローゼズが悲鳴じみた叫びを上げた。クリスタリオも驚愕に目を見開く。モリオンは黙ったまま動こうとはせず、横目でアメジスタンをちらと見遣った。
アメジスタンは笑みを崩さず、いつもの態度と同じぐらいの軽さで銃爪を引いた。
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