第14話 とにかくちゃんとした風呂は最高である

「ざぶーーーん!!」


 自ら口にしたい程、

 久しぶりのちゃんとしたお風呂だー!!


「こら、まだ洗っている最中だったぞ」

「おいら、はっ、はずかしぃーー!!」


 うん、俺の中で『本来のテイク』が、

 めっちゃ恥ずかしがっていたからね!


「んもう、やんちゃな男の子ね」


 ……実際これくらい大きな少年がこんな行動取ったら、

 気の毒な子に思われるのだがそれは俺の、元の世界の話だ。


(ずっと山賊に育てられていたからね、仕方ないね!)


 これは例の修行場で一年くらい過ごしたら調整しよう。


「……やはり子供は子供だな」

「そうね、おかしな目で見てくる事もないし」


 長女次女が大人な話をしている、

 おそらく混浴した時の反応を見て、

 この『テイク』の、本当の年齢を探っているのだろう。


(人間の子供に化ける魔物とか、新し目のシリーズで出て来たからねっ!)


 俺はいかにも子供っぽくお風呂で泳いでみる、

 うん広い、前世で子供の頃に行った鬼怒川温泉を思い出させる。

 あの当時はおおらかで、そこそこの年齢でも母親にくっついて女湯へ……


(本来の少年テイクが俺の中に居なかったら、中がおっさんだってバレていたかも?!)


 でも今はお湯の熱さに関係なく、耳まで熱々である。


「よしテイク少年、どっちがより長く潜っていられるか競走しよう」

「おいら、負けない!」

「負けた方が勝った方の言う事を、何でも聞くんだぞ」


 三女からの危険なお誘いキター!


(今、何でもって言ったよね?!)


「じゃあ私が、どっちが長いか見るね」


 ジャッジは四女らしい。


(若い身体、しかも元山賊だ、いくらでも我慢は利くはず!)


「それじゃあ……スタート!」


 ざぶん、どぷん、と同時に潜る!

 

(ここはちゃんと紳士らしく目を瞑って……)


 と、しばらくじっとしていたら、

 突然、お湯の中で両脇をくすぐられた!!


「ごぼごぼ……ぶわっは! おいら、しんじゃう!!」

「はい、ミラールお姉ちゃんの勝ち」

「ふう、テイク少年、甘いぞ」


 物理攻撃は反則では!

 て、どうせそこまで決めてなかったでしょとか言われるんだろうな。


(よし、ここはイジケよう)


「ひどいよぉ、おいら、おいら泣きたいよぉ」

「男の子だろ? 約束は守ってもらうよ」


 ううう、何をさせられるんだろう。


(これが実況なら、特に深夜だったら、えげつないコメントが流れるんだろうな)


「よし、じゃあテイク少年、言う事を聞いてもらうよ」

「な、なななな、♪なーななーなななーななーにっ?!」


 とりあえず謎ソングで不安を紛らわせる。


「今夜は、一緒に寝てもらうよっ」

「え、ええっ、えええええ?!?!」


 それはご褒美では?!


(いや、むしろハニートラップ?!)


「おいら、恥ずかしい!!」

「大丈夫、変な事はしないから」

「……ほんと?!」


 あーこういう展開、

 初期に出たシナリオだと絶対ないけど、

 新し目だとゲームの対象年齢も上がって普通にあるんだよな。


(これ、まだ中身を疑っているんだろうな)


 そうは言ってもこれくらいの年頃、

 普通にエロガキだって居ると思うのだが、

 さてどうしよう、いかんせん今のテイクでは弱い弱い。


「じゃ、しっかり身体が温まったら、拭いてあげるよっ」


 いやいや親愛度を上げないでえええええ!!!


(早く、早く悪女の皆さんに、お会いしたいよう……)



 ……という事で、時は少しだけ飛んで三女ミラールの寝室である。


(ゲームだったら暗転してるだろうけど、しっかり体中を拭いてもらったよ!)


 うん、変に反応しなかったテイクくんを褒めてあげたい。


(むしろペットの犬か猫を四姉妹が拭いてるみたいな感じだったからね!)


 犬を洗う動画とかこれが意外と再生数が伸びたりする。


「さあ、テイク少年、湯冷めしないように、私でしっかり温まってくれ」

「……おいら、おいら……」


 これはアレだ、

 こうして密着する事でどきどきさせて、

 冷静さを無くさせて何か情報を聞き出そうとする作戦だろう。


(客観的に見たら、怪しさしかないもんな)


「なあ少年、何か隠している事は無いか? もっとこう、決定的な、核心的な何かを」

「な、なんにもないよっ」

「本当か? 正直に言わないと、もっともっと密着するけど」


 やばいやばいやばい、

 素人童貞の俺がこんなお姉ちゃんプレイで『おっき』する訳にはいかない!

 いやなんだその理論は、ていうくらい混乱してきた、顔が熱い!


(よし、こうなったら……この手を使おう!)


「おいら、おいらずっと寂しかったんだ……」

「……テイク?」

「ミラールお姉ちゃん……おねえちゃああああああん!!!」


 顔を胸にうずめて、泣いてやるう!!


「テイク……少年」

「うわああああああああああああーーーーー……」


 ここでのポイントはあくまで『少年が姉に甘える』感じで抱きつく事だ、

 少しでもいやらしい動きをしたらその瞬間に『事案』となってしまうだろう、

 だからこそ、純粋に人恋しい少年が、甘えさせてくれる母や実姉と一緒に寝る時のように……!!


「辛かったんだね、いいよ、泣きたいだけ泣いて」

「ううっ、うあああっっ……おいらっ、おいらああああああ……」


 後はこのまま泣き疲れて眠れば、

 ミッションコンプリートだなっ!!

 安心して目を瞑って、何気にスターテスを見てみると……


(うわっ、ミラールとの親愛度が、Dになってるううううう!!!)


 うん、次にこんな風に甘える必要があれば、

 その時の相手は、長女か次女にしよう!!!

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