第15話 そもそも悪女ハーレムってなんなのよってお話

「テイク少年、いつもより飛ばすからしっかり捕まっていろよ」

「うん、おいら、お、おお、落ちたくないいいいい、ひいいいいい」

「落ちたら拾ってあげるぅ」


 翌朝、早い時間からペガサスに乗って修行場へと連れて行って貰う、

 四姉妹全員で行くと不味いらしく、あくまで下のふたりによる『早朝訓練』としての遠出らしい。


(理由なんて何だって良いのですよ!)


 ただ、まだ薄暗い時間でもやっぱり高いものは高いし怖い者は怖い、

 でも我慢すれば、修行場で落ち着けば、戻ってくる文明と共に俺自身を心置きなく強くできる!


(そして、そして早く、最初のひとりで良い、悪女を手に入れるんだー!!)


 俺は気を紛らわせるために自分が思い描く『悪女ハーレム』を想像する。


(そもそも敵の女幹部でハーレムを作るという事はですね……)


 一番考えられるのは自分が悪の魔王か何かになってしまう、

 そうすると必然的にその幹部も僕の所へ……えっ、そう上手く行くかって?

 実はこのゲーム、主人公や自軍キャラクターが使える訳では無いが、便利なアイテムがあるんですね。


(そう、なんと記憶を綺麗さっぱり消してしまう魔法書があるのです!)


 これゲームでも初期のえげつないストーリーとして伝説になっている、

 何せ前半戦主人公の結婚相手、奥さんの前に現れた悪の魔道士がこれを使い、

 連れ去ったのち、魔王の子を孕ませるという……ちなみにその子が後半戦のボスである。


(結局、その奥さんを救出しようとしても記憶が戻らないまま……)


 そもそもこのゲームの売りが『死んだ仲間はもう二度と戻らない』だった、

 いやイージーモードやゲームのシリーズ中期からは蘇生の方法も出てきたけれども!

 物語上、小説版やコミカライズでも、一度消された記憶は二度と戻らない……まったく幼心にズキンと来るものがあった。


(だからこそ、魔王に心酔し全てを捧げるあの悪女に使って、俺のモノにするんだ!!)


 まったく悪い奴だなーって思うが、ストーリー上の悪者はアッチの方だし、

 配信主の『なめくじ』さんがしれっとカミングアウトした学生時代、

 某●S●T●Y●でやったという話の方が、よっぽど悪……


「テイクくん、風が強くなってきたから気を付けて!」

「うん、おいら、がんばって、しがみついてるよっ!!」


 ファルちゃんの忠告であたらめてミラールさんに密着する!

 お腹のあたり、やわらかいなぁ……やはり戦う女性でも女の子だ、

 これくらいの年齢の子にこうやってしがみついているだけで本来の年齢なら事案なのだが。


(抱きつくならやっぱり、大人の、悪女のお姉さんだよね、えへへ、えへへへ)


 まずいまずい、中身のおっさんが漏れそうになる。


(でも特にでっかい悪女のふたりが、抱きつ着心地良さそうなんだよなぁ)


 でも悪女がすんなり抱きつかせてくれるかというと、

 まあ記憶を消していちから調教し直せば、

 でも悪女は悪女として再教育しないと、悪女じゃなかったらどうなるんだろう。


(それはまあ、このゲームの『見えない力』に任せられるのかな?)


 話を戻そう、

 悪女を従えるにはこの俺、

 いや僕『テイク』が悪者にならないといけない。


(でも、『正義の悪』というのもあるんですよ!)


 そういえばこのゲーム、

 シリーズ最新に近い方だと、

 ストーリーによってメインヒロインのひとりが悪の親玉になったりするんだよな。


(つまりは、全てこの俺の進め方次第ってことで!)


 っていやいや、それなら『主人公の』進め方次第ってなるはずだ、

 あくまで俺は、このおいら『テイク』は限りなくモブに近い味方だ、

 それがやたらめったら強くなって主人公に影響を……うん、物語がどうなるか楽しみだ。


(とはいえ、ハッピーエンドで悪女ハーレムが作れないくらいなら、バッドエンドでも悪女ハーレムを作りたい!)


 その時は、悪のボスになったらガハハガハハ言いながら死んでやる。


(悪の親玉は、その背景こそが面白いって声優の●安さんが言ってたよ!!)


「テイク少年、待たせたな、遺跡が見えてきたぞ」

「は、はやくはやく、おいらもう、我慢できなーい!」


 うん、実は冷たい風に晒されて、

 少年らしい小さな膀胱が、ね、あと小さいのは……


(空中で放尿とかも考えたけど、女の子の前じゃできないからねっ!)


 ある意味、男のロマンである。

 いやそんなの俺だけか、まあいいや。


「はいはい、あそこで良いんだな?」

「テイクくん、まだ高さあるから気を付けて」

「そんなことより、おー、しっこーーー!!」


 飛び降りるとちょっと一滴漏れそうになる、

 本当に間に合わなかったら草むらでしようと壁に……あれ?

 ぶつかる事なく道が開けた、うん、一度通れば同じ手順は踏まなくて良いらしい。


(これは……間に合う!!)


 修行場こと隠しアジトへ突っ込む僕!

 うん、大丈夫だ、きちんとした綺麗な男子トイレに入り、

 そして……う~~~ん、スッキリィィィ……


(ここの掃除、あの木偶人形がやってくれてるのかな)


 掃除道具入れがあるからね。


(そういえば、あの姉妹はちゃんとついて入って来られているのだろうか?!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る