第54話 またなの?

◇◇ ◇(ライムント視点)


 移動魔法でクラッセン王国に戻った。王妃宮にいるエデルガルトに会いに行く。早くエデルに会って話をしたい。

 王妃宮のプライベートエリアにあるエデルガルトの部屋に早く行きたいが、いきなり部屋に現れたら驚くだろうとエントランスに到着するように移動した私は早足でエデルガルトの部屋を目指した。


「ライ! 大変なの!」


 義姉上が私の姿を見つけるなり、淑女らしからぬ声で叫び駆け寄ってきた。


「義姉上、どうされました?」

「エデルが…エデルが倒れたの」


 え? 


「どんな具合なのですか?」

「あなたからクラッセン王を討ち取ったと聞いてすぐふらっと倒れたのよ。魔法医師に診てもらったのだけど、原因はわからないの。魔力枯渇ではないらしく、とにかく回復魔法をずっと掛けてもらっているのだけれど意識が戻らないの。早く傍に行ってあげて」


 義姉上は顔色が悪い。私は慌てて、エデルガルトの部屋に飛び込んだ。


 部屋には医師が二人、そしてメアリーがいた。


「先生、エデルは?」

「まるで眠っているようです」

「生きているんですよね?」

「はい。心臓は動いています」


 魔法医師達も最善を尽くし作れているようだ。


 そうだ、トルデリーゼを呼ぼう。私は魔道具でトルデリーゼに連絡を取ると、リーヌスが出てきた。


「あっ、ライ殿、リーゼなら寝てるよ。疲れたのかな? ぐーすかねてる。起きたら連絡させるよ」

「あぁ、頼む。エデルが倒れて意識が戻らないんだ」

「わかった」


 まったく、トルデリーゼのやつ、何を呑気に寝てるんだ。


 私はイラッとしたがすぐに気持ちを切り替えて、魔法医師達と一緒にエデルガルトに回復魔法を流し始めた。



☆☆ ★


 ここはどこなのだろう?


 確かライムントからクラッセン王を討ち取ったと連絡を受けたまでは覚えている。そこから全く記憶がない。


 ここ、前にも一度来たことがあるような気がする。陽当たりがよくのんびりした感じの森の中……あ〜!


「やっと思い出した?」


 あの時と同じ白い服を着た自称神様が笑いを浮かべ立っていた。


「神様?」

「当たり!」

「どうして?」

「退屈になったからまた呼んだのさ」


 悪びれる様子もない。


「帰して! やっと落ち着いてきたのに」

「もうひとつの世界に行きたいって行ってたじゃないか。願いを叶えてあげようと思ってね。ただ、あの世界は君がいた頃とは少し変わっているんだ。あの世界の今に飛ばしてあげるよ」


 神様はニヤッと笑った。


「ちょっと待ちなさいよ!」


 あの声はトルデリーゼ? こえの方に顔を向けるとトルデリーゼが駆けてくるのが見える。


「うるさいのが来たな。まぁ、いい。二人まとめて行ってもらう。ただお前たち二人に身体はない。魂だけで行ってもらういいな」


 いいも悪いも私達に反論の自由はないようだ。


 神様が手を叩くと、また、前のと同じように足元から消えていく。


 気がつくとトルデリーゼと共にもうひとつの世界にいた。

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