第51話 いよいよだ

「エデル、ただいま」


 ライムントが王宮から王妃宮のサロンに移動魔法で飛んできた。


「お疲れ様。話は上手くいったの?」

「あぁ、クラッセン王の首取ってくるよ」


 はぁ? 首取る? ライムントが自ら行ってクラッセン王と対決するの?


「大丈夫なの? 危なくないの?」


 私は心配になった。


「大丈夫さ。私は天才魔導士だよ? そうそう、前にエデルが言っていた親子鑑定やっといたよ。やっぱりトラウゼンは前々王とは赤の他人。クラッセン王と同じエネルギーだったよ。どうやらトラウゼンだけじゃなく、他にも捨てた自分の子供に前々王の子供だと暗示にかけていたみたいだ。何の目的でそんなことをしたのかわからない。それにクラッセン王は自分も前々王の落とし胤だと言っているようだ。なんでも前々王がクラッセンに来た時に当時の王妃とそう言う関係になり、自分が生まれた。あの男の血を引く自分は強い王なんだとさ。笑うよな。もちろん全く赤の他人。もう死んでいないけど母親が聞いたら泣くよな」


 私は驚きで空いた口が塞がらなかった。なぜそんなことを言うのだろう?


「クラッセン王は前々王に憧れて、あんな王になりたいと目指しているんだろう。そして最後は落とし胤の自分がバウムガルテンを取り込んで大国の王になるんだそうだ」


 ライムントは馬鹿にしたように笑う。


「エデル、行ってくるわ」

「待って、私も行くわ」

「ダメだよ。そうだな。エデルはここから私に魔力増強魔法をかけ続けてくれないか。それなら百人力だ」


 ベルミーナがサロンに入ってきた。


「エデルのことは心配いらないわ。私の可愛い親友兼義妹はこのクラウベルク王国が守るわ。ギルはもうバウムガルテンに飛んだわよ。いよいよね。さっさとぶっ潰してきてちょうだい」

「あぁ、任せてくれ。じゃあ行ってくる」


 ライムントはそう言い残し消えた。



🐦‍⬛🐦‍⬛ 🐦‍⬛(ライムント視点)


「遅いぞ、ライ!」


 移動魔法で到着するとそこにはなかなかのメンツが揃っていた。


 太王太后様、マティーアス閣下、兄上(ギルベルト)、アーベル、ローザリア、エジンバラ、トルデリーゼ、リーヌス。そして、トルデリーゼの兄のゲオルグ。これだけ揃えば、クラッセン王国なんて一捻りのような気がする。


「アーベルが水魔法と風魔法で暴風雨を起こし、クラッセン軍を国を出たばかりのところで足止めしてくれている。トルデリーゼは幻影魔法で騎士達の精神力を奪っている」


 マティーアス閣下が指揮をとるようだ。


 ゲオルグが不敵に笑う。


「城の者達は私とリーゼが精神拘束魔法で、役立たずにした。王は今孤立無援だ。誰が行く? 移動魔法で王の背後にでて、一瞬で終わらせよう。俺が行ってもいいが、ライ、お前がカタをつけてこいよ。自分の女の10年を奪われたんだろ?」


 ゲオルグは私の兄上の側近で、私に取っては狸の兄上より怖い獰猛な虎のような男だ。ガツンと言われ、一瞬固まってしまう。


「お兄様、またそんな上から恫喝するみたいに言う。ライはうちの影達とは違うのよ。一応王子様なんだからもっと優しく言わなきゃ」


 トルデリーゼはクスクス笑いながら私の前に出た。


「ライ、私が行こうか。私がエデルの恨み晴らしてもいいわよ。でもそれだとあなたは一生私に勝てない。それでもいい?」

「なんだかややこしそうだな。俺行こうか? 俺はお前らみたいにエデルさんと面識ないし、絡みもないから勝ちも負けもないしな」


 リーヌスが手を頭の後ろに組んだままつまらなそうに言う。


「私が行く。エデルに援護を頼んだ。ふたりであいつを倒す」


 私は拳に力を込めた。


 マティーアス閣下が立ち上がった。


「では、作戦はこうだ」


 次々とみんなに指示を与える。私達は円になり、自分達の役目を確認した。


 そして、それぞれの持ち場へ飛んだ。

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