第48話 リーヌスの話2 (ライムント視点)

 リーヌスは見た目と中身がどうやら違うようだ。見た目は斜に構えた曲者っぽいが中身はかなりざっくばらんらしい。


「普段は幻影魔法で姿を変えているし、話し方も変えているんで、きっと兄上でさえ、嘘の俺が本物だと思うだろうな」


 リーヌスは兄とは小さい頃に離れたので、兄は本当の姿を覚えていなかったようだ。野心家の父親とクラッセン王がそばにいれば、余程出ない限り正しい人にはなれないだろう。


「俺はかーちゃんに連れられて実家に戻れてラッキーだった。じーちゃんはめっちゃちゃんとしてるからな。そうそう、とーちゃんは失脚させたから、あとは兄上と国王なんだけど、とりあえず嘘の情報を本当だと思い込ませている。クラッセンのスパイはみんな俺の配下だからね」


 リーヌスはウインクをした。


 トルデリーゼは口角を上げて悪い顔をしている。


「リーヌスのお兄ちゃんは、私が魅了の魔法でたらし込んだわ。とりあえずは国王の参謀だけど、最後の最後に裏切らせる予定よ。国王が失脚した後のこの国をどうするかね。それが難しいところよ」


 もうそんなところまで考えているのか?


 またトルデリーゼに良いところを持っていかれたな。


「いやいや、そんなことはないわ。あなたの仕事はこれからよ。クラッセン王と対峙してよね。天才魔導士らしいところ見せてよ」


 また心を読みやがった。


「私は天才魔導士なんかではない。魔力が強く、研究が好きなだけだ。どちらかというと天才魔道具師と言われたい」


 私は目一杯の反抗をしてみた。トルデリーゼは目を丸くしている。


「いいわね、それ。今日から天才魔道具師でいきましょう」


 全く必死になるだけバカだな。


「とにかくいいところを置いてるから、頑張りなさいよ。エデルに良いところを見せなきゃね」


 トルデリーゼは私の肩を思い切り叩いた。

痛い。リーヌスはゲラゲラ笑っている。


「俺もさ、リーゼに殴られたんだ。かーちゃんと同じくらい痛かったよ。それから俺はリーゼに夢中さ。あんたが恋敵でなくてよかったよ」


 はぁ〜、なんてもの好きなんだ。私はエデルガルト一筋だ。どう間違ってもトルデリーゼなんかごめん被る。


「リーヌス、もの好きだな」


 ぽつりと呟くとすごい力で後頭部をスパーンと殴られた。よく頭が外れなかったものだ。


 それから、リーヌスにバウムガルテンの太王太后様が会いたがっていると伝えた。


「じーちゃんも一緒にどうかな? まだ元気だし、太王太后さんの話をよくしてるから会いたいかもな。とりあえず移動魔法でじーちゃんとこに行こーぜ。リーゼも紹介したいし」


 まさか、マティーアス様に会えるとは思ってなかった。マティーアス様を連れて帰ったら太王太后様喜ぶかな?


 そんなことを思っていたら、勝手に移動魔法に巻き込まれていた。


 目の前はうっそうとした森だった。


 森の中を進むと急に明るくなり道が開けた。そこには頑丈なまるで要塞のような建物があった。


「ここ、じーちゃんの屋敷。かっこいいだろ?」

「ああ」


 確かにカッコ良すぎる。私はただただ圧倒された。

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