第38話 テレーザリアは?

 私達はまた移動魔法でクラウベルク王国に戻った。


 あのままバウムガルテン王国にいたら、また私を担ぎ上げようとする輩につかまるかもしれない。

 というか、ライムントが若干ヤンデレ気味なのだ。私を常に目の届くところに置いておかないと不安になるらしく、監禁? いや、さすがにそこまではないだろうが軟禁ぐらいにはなりそうな気がする。自分がいない時はしっかりトルデリーゼを傍につけている。


 そろそろ、前に頼んだテレーザリアのことがわかる頃かしら。私はライムントとトルデリーゼに尋ねてみた。


「クラッセン王国の第2王女の件はわかった?」

「それな。第2王女はいなかった」

「そう。やはりあちらの世界とこの世界は微妙に違うのね」


 またテレーザリアに会えるかもしれないと思っていたのに。ちょっと残念だ。


「その話なんだけど」


 トルデリーゼが口を開く。


「テレーザリアのお母さんを探してみたの。確か行儀見習いに来ていた子爵令嬢だったでしょ? リアが生まれたあたりに王宮に上がっていた子爵令嬢は3人いたので、その令嬢達を調べたのだけれど、誰も国王の毒牙にかかっていなかったし、愛妾にもなってなかったわ」


 そうか。あの世界ではテレーザリアは存在していないんだ。でも良かった。


 トルデリーゼは話を続ける。


「実はその中のひとりが宮廷医師団の若い医師と恋に落ち結婚したの。そして生まれた娘にテレーザリアと名前をつけた。テレーザリアは今、我が国の魔法学園の魔法医療科で魔法医師になる勉強をしているわ。そして……」


 そして?


「ハウル殿下と恋をしているみたいよ」


 トルデリーゼはふふふと笑った。そういえば少し前にハウルがあの世界の記憶があるとトルデリーゼが言っていたような気がする。まさかテレーザリアも記憶があるのだろうか?


「でも、リアが幸せならよかったわ。あちらの世界みたいに酷い目に遭わずにすんでよかった。お母様もちゃんと好きな人と結婚できて良かったわね」

「ほんとにそうね。それにしてもライムント殿下はあちらの世界の記憶を思い出さないの?」


 トルデリーゼはライムントを上から見下ろす。これマウント?


「性格の悪い女だよな。全く。私は記憶はないけど、エデルが傍にいて、笑っていればそれでいいんだよ。記憶があったところでみんは子供で私だけ大人だったのだろう? それはそれでつまらんからな」


 口ではそう言っているが絶対拗ねている。その姿を見て、何だか平和だなぁと思う。

 実際はクラッセン王国に狙われているようで平和でもないのだけどね。


ビビービビー


 ライムントの魔道具から音がした。ライムントが魔道具に向かって話しかける。


「どうした?」

「姉上を刺したナイフに回復魔法無効化の魔法を付与した者がわかった。エジンバラが捕らえてきて、今尋問をしている。ライも来るか?」


 アーベルからの連絡だ。


「すぐに行く」

「待っている」


 通信は切れた。


「捕まったのね。ダウムは調べてなかったの?」

「うちはテレーザリアを探させたの。エジンバラに手柄をあげさせないとダメでしょ? うちが横取りするのもどうかと思ったのよ。でも調べはだいたいついているわ」


 そうなのか。色々気を使ってくれているのだな。


「エデルはどうする? 行くか?」

「もちろん行くわ。真相を知りたいもの。それにリーゼに心を読んでもらいたいわ。どんな気持ちでそんなことをして、そのあと後悔したのか知りたいの」

「そうか。工作員であれば後悔はないだろうな。王命だろう?」


 ライムントはそう言うとふっと笑った。


「じゃあ、行くか」


 私達3人はまた移動魔法でバウムガルテン王国に飛んだ。

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