第34話 真相3

 ライムントから話を聞いて、私は呆気に取られた。

 まさか、エジンバラや父親のイザック、母親のマイアがそんなことを考えていたなんて。でもロッソ家はずっとアーベルの傍にいた。だから、あまりにもアーベルを愛し過ぎたのかもしれない。

 今この記憶を持ったまま、エアハルトにミアを近づける前に戻してほしい。そしたら速やかにエアハルトを王太子から下ろし、アーベルを王太子にする。いや、もっと前、王太子を決める辺りまで戻してほしい。


 そしたら……。


 それにしてもロッソ家が精神拘束魔法が使える家だなんて知らなかった。大昔になんだかの事件があり、我が国は魔法に制限をかけていたのか。それも知らなかった。


「それで、ロッソ家とミアと父親のヘル男爵はどうなったの?」


 私はライムントに尋ねた。


「ミアとヘル男爵は禁忌の魔法を使って国家を転覆しようとした罪で処刑された」


 早っ。禁忌の魔法を使った者は処刑する事は法律で決まっている。


「エジンバラ達は?」

「アーベルはまだ迷っている。エジンバラはアーベルに禁忌の魔法を使ったが、アーベルには効かなかった。両親は禁忌の魔法は使っていない。ロッソ伯爵はミアの封印を解いた罪があるが、封印を解くことに対する刑罰は決まってないそうだ」

「つまり、アーベルはロッソ家を罪に問わないつもりなの? 全ての罪はミアとヘル男爵に押し付けるの?」


 ライムントは苦々しい顔になった。


「エデルはどうするのがいいと思う? エジンバラも両親もエデルをどうこうするつもりはなかったんだ。エアハルトを失脚させ、アーベルを王太子にし、ローザリアと結ばれて欲しかった。そしてエデルは私と結婚してクラウベルクと思っていたようだ」

「私が余計なことをしたのね。あの時出しゃばって国王代理になどならず、アーベルに任せれば良かったのね。そしたらアーベルは私をそのまま女王にしようなんて思わなかったでしょうし」


 私が出しゃばったのが悪かったのか。判断ミスをしたのかもしれない。


「それは違う。あの時はあれが正解だった。君でなければ改革はできなかった。ただアーベルが成人した時、何がなんでも君を女王などにしないでクラウベルクに連れて帰るべきだった」


 そうだわね。いくら議会で満場一致だったとしても、私は私の幸せを優先するべきだった。

でも、そうしていたらアーベルが殺されていたかもしれない。


 しかし……。


「ねえ、私が刺されたナイフには回復魔法無効化の魔法がかけられていたのよね?」

「ああ、だから私の魔法でもすぐには救えなかった。すぐに気がついて、無効化の無効化をしたが、仮死状態にすることが精一杯だった」

「回復魔法無効化なんて高度な魔法は誰かかけたのかしら? ミア達は精神拘束魔法は使えるけど、それだけでしょう? 他の魔法は使えないはずよ」

「確かにそうだな」


 ライムントは驚いた顔をしている。


「まだ、いるわね。なんで処刑する前に吐かせなかったのよ〜!」

「面目ない」

「アーベル達は大丈夫なの?」


 私はアーベル達が心配になった。


「あぁ、あちらにはリーゼが暗部の者を護衛につけている」

「それなら安心ね。とりあえず私も一度バウムガルテンに戻るわ。エジンバラやロッソ伯爵達と話がしたいの」

「それはダメだ。エデルをバウムガルテンに戻すつもりはない。エデルは私と結婚して、ここで暮らすんだ」


 全く何を言っているの。私はライムントを睨みつけた。


「当たり前じゃない! もう私はバウムガルテンの女王になんか戻らないわよ。ただ、この事件、最後まできちんと見届けたいの。神様はなぜ私をまたこちらに戻したか、その真意も知りたいのよ。それにもうひとつの世界のことも気になるわ」


 私は顔を上げた。


「リーゼ、リーゼはいる?」

「いるわよ」

「リーゼ、あの世界がどうなっているか知らない?」


 私は唯一あの世界の記憶を共有しているトルデリーゼに聞いた。


「残念ながら、わからないわ。ただ、ハウル殿下も記憶があるみたいなの。こっちの話が片付いたら、あっちも片付けたいわね」


 さすがトルデリーゼ、私の気持ちが伝わっている。


「じゃあ、ライ、バウムガルテンに行きましょう。帰るのではなく、行くのよ。私の帰るところはここだからね」


 私はライムントの手を取った。


「わかった。一緒に行こう。リーゼも行くぞ」

「OK!」


 私達は移動魔法でバウムガルテンに飛んだ。

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