第30話 いよいよ
湯浴みを終え、薔薇の香油でマッサージしてもらった。なんだか慣れしたんだマッサージ感? まさかメアリーなの?
「メアリー?」
「そうですよ。メアリーはどこにでもついていきますとお伝えしておりましたでしょう」
「嬉しい!」
私は思わずメアリーに抱きついた。メアリーがいてくれれば百人力だ。
久しぶりにドレスを着て、髪も綺麗に整えてもらった。
コルセットをつけてドレスを着ると何だか背筋がシャキっとする。
ミアに刺される前の私は凛とした厳しい女だった。あんな可愛げのない私を好きになってくれたライムントには感謝しかない。
転生して、アーベルとローザリアの娘になり、可愛いを学んだ。
あの7年は私にとって、前(今かな?)の私には経験できなかったことが経験できた有意義な7年だったのだと今なら思える。
だって、こんなピンク色のラッフル付きのドレスなんて以前なら絶対着なかったし、似合わなかったもの。髪もいつも引っ詰めていたし。
今日はサイドを編み込んで垂らしている。ふわふわしたイメージだ。
「エデル、やっとなりたい自分になれた感じね」
トルデリーゼが笑う。
「そうね。以前は毎日ピリピリしていたわ。国のために必死だった。今は国の事はもういいし、肩の荷が降りた感じ。私に女王を求めてる人はここにはいないでしょう?」
やっと解放された……はずよね?
「ライムント閣下が頑張ったのよ。エデルが眠っている間の話を聞いたら褒めてあげてね。チューなんてしてあげたら嬉しすぎて死んじゃうかもね。アハハハハハ」
ライムント頑張ってくれたのだな。しかし、犬猿の仲は緩まったみたいだけれど、辛辣だわね。
そういえば、眠る前は殿下と呼んでいたのに、今は公爵とか閣下ね。私が眠っている間にライムントは公爵になったのかしら? だからこの屋敷?
聞きたいことがたくさんあるわね。
食事が用意されているダイニングルームに到着した。
すでにライムントは座っていたが、私の姿を見るなり立ち上がった。
「エデル! 綺麗だ! めちゃくちゃ可愛い!」
恥ずかしい。
「恥ずかしいわ」
私は顔を手で覆った。
ライムントは私にかけ寄ってきた。
「姫様、お手をどうぞ」
エスコートしてくれるようだ。私はライムントの手を取った。
11年振りの食事? でも前の世界でも食べていたから3年振りになるのかな。何も食べないで寝ていたのに、少し痩せているくらいなのはライムントが魔法でエネルギー補給をしていてくれたおかげのようだ。
テーブルの上にはつぎからつぎへと美味しそうなご馳走が出てくる。もちろん美味しそうではなく、本当に美味しい。
「エデル、どうだ? エデルの好きなものを作ってもらった。デザートもたくさん食べてもっともっと太ってくれ」
いやいや、もっともっとってライムントはデブ専?
私はそこそこでいいのよ。背が高いから、見た目より体重はあるのよね。
「ライ、そろそろ教えてくれない?」
私はライムントに尋ねた。
「そうだな。食事が済んでからにしよう。メアリー、用意してくれ」
メアリーが別の部屋にお茶の用意をしてくれるのね。メアリーなら安心だ。毒を盛られる心配はない。
「はい! かしこまりました」
メアリーの声が聞こえた。
食事も終わり、私達はサロンに移動した。
食事中に聞いた話では、この屋敷は全ての部屋に防音魔法がかかっているそうだ。そして悪意のある人は敷地にはいることができないらしい。なので安心安全な屋敷なのだそうだ。
屋敷にはライムントと私、あとは何人かの使用人が暮らしている。トルデリーゼは実家からの通いらしい。
「それで黒幕は?」
はやる気持ちが抑えられない。
「黒幕と言うほどの大物ではないんだ」
小物なの? 誰?
私はライムントの顔をじっと見た、
***
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
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