第29話 久しぶりの湯浴み
私はあれからまた1年程眠っていたらしい。
ミアに殺されかけ、トルデリーゼに助けれて、目を開いたのが一年前。
その前は10年眠っていたので、合計すると11年か。どれだけ寝るんだ私は?
ライムントは、時の歪みを直したせいだろうと言っていた。
私が眠っている一年の間にミアを使い、私を殺そうとした犯人が捕まったそうだ。
それはライムントが作った魔道具で暴き出せたらしい。
「まさか、あの人が黒幕だったなんてな」
ライムントは驚きを隠せない。
「あれは黒幕とは言わないわ。愛ゆえね」
トルデリーゼは呆れた顔をしている。
誰なんだろう?
「誰なの? 教えてくれてもいいでしょう?」
私だけが知らないなんて嫌だ。
「とりあえず、湯浴みでもしておいでよ。浄化魔法で綺麗にはしていたけど、うちのメイド達はエデルを磨きたくてうずうずしているんだ。磨かしてやってくれないかな」
なんだそれ? でも、確かに1年も湯浴みしてないわ。いや、11年か。
いくら浄化魔法をかけてくれていたとはいえ、湯浴みしないとまずい。
「よろしくお願いします」
私はメイド達に身を委ねることにした。
「11年も歩いてないから、私が湯の部屋まで連れて行くよ。流石にその先はリーゼにまかす。今だけな。今だけ任せる」
「はいはい、いくらエデルが好きでも私は恋愛対象はノーマルだから、大丈夫よ」
トルデリーゼはライムントを見てクスクス笑っている。
どうやら私が眠っている一年の間に犬猿の仲からちょっとマシになっているようだ。
ライムントに起こされて、久しぶりにベッドから出る。
一年前にもベッドから出たみたいだが記憶がない。余程深く眠っていたのだろう。
「軽いな。もっと太らなきゃダメだ」
私をお姫様抱っこして歩きながらライムントは呟く。
「エデルはスイーツが好きだから、パティシエにどんどん作ってもらいましょう。エデルのために我が国イチのパティシエを引き抜いたのよ」
トルデリーゼは嬉しそうだ。
「シェフも凄腕だよ。湯浴みが済んだら食事にしよう」
食事か……。しかし、そんな凄い料理人を引き抜いたって。
ひょっとしたら私、11年食べてない? いやいや、チビエデル時代に湯浴みも食事もしているから、それはないな。
そんなことを思っていた湯の部屋に到着した。
留学していたから覚えているが、クラウベルク王国の人達は湯あみ好きだ。部屋の中にも湯の部屋はあるが、大抵屋敷にいくつか大きな湯の部屋がある。多分そんな大きな湯の部屋に連れて行ってくれるのだろう。
「じゃあ、ここからは私が変わるわね。公爵は手前の部屋で待っていて」
「仕方ない。結婚するまでの我慢だ。エデル結婚したらふたりで入ろうな」
はぁ〜??? 何を言っているんだ。恥ずかしい。恥ずかしすぎる。トルデリーゼはニヤニヤ笑っている。
「も〜! 変態!!」
私は湯の部屋に逃げ込んだ。
◇◇◇
びっくりするくらい大きな湯船には薔薇の花びらがいっぱいだ。
湯の部屋中に薔薇の香りがする。しばらく大きな湯船で手足を伸ばしながら浸かり、今度は小さな湯船に促された。
小さな湯船では、メイド達が髪や身体を洗ってくれる。あ〜幸せだわ。また眠くなってきた。
眠ったらまた何年か起きないのかしら?
「大丈夫。もう普通よ」
メイド達に混じって私に魔法を流してくれていたトルデリーゼが言う。私の考えていることがわかるのだろうか?
そうだ! あれだわ! 私は念話のことを思い出した。
「ねぇ、リーゼ、念話覚えてる? あれって今でもできるの?」
「できるわよ。やる?」
「やる、やる。あれ便利だもんね」
「確かに便利よね。じゃあ、やるよ」
トルデリーゼは私の手を取りエネルギーを流す。私もエネルギーを流し返す。
『OK、バッチリね』
『やっぱりいいわね』
私達は再び念話で話ができるようになった。
「ライにはしばらく内緒にしておきしょうね」
「承知」
私の言葉にトルデリーゼは嬉しそうに返事をした。
***
皆様、今年も私の拙い作品を読んでいただきましてありがとうございました。
来年も皆様に喜んでいただけるような楽しい作品を書いていきたいと思っております。
来年も引き続きよろしくお願いします。
良いお年をお迎えくださいませ。
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