第28話 目覚め
この部屋は?
私の部屋ではない。
目を開いてそれに気がついた。天井の模様が違うのだ。
しっかり目を開いて、身体を起こそうとするが、あちこちが痛い。でも前のように固まって動かない訳ではない、
「エデル! エデル、目が覚めたか」
ベッドの脇にいたのだろう、ライムントが私の手を握る。力が強すぎて痛いわ。
私は顔を歪ませた。
ライムントが慌てたように口を開く。
「どうした? どこか痛いか? 辛いか?」
そりゃあちこち痛いけど、1番痛いのはあなたが握っている手でしょう? 離すか緩めるかして欲しいわ。
そう告げようと口を開く。
「手」
まだ言葉がちゃんと出ない。
「手離しなさいよ。あなたが馬鹿力で握っているから痛いのよ。ね? エデル」
この声はトルデリーゼか?
「す、すまない。つい嬉しくて力加減ができなかった」
ライムントは照れ笑いだ。
「エデル、本当に良かった。もう絶対こんな目に遭わせない。私が判断ミスをしたせいで……」
いやいや、ライムントのせいじゃないわ。これは神様のせいよ。神様が退屈だから私達人間を弄んでいるのよ。だからそんな顔しないでほしいわ。
私は手を伸ばしライムントの頭を撫でた。
「ライのせいじゃないわ」
お〜、ちゃんと喋れた。良かった。
私は言葉がちゃんと音になったことに安堵した。
「ここはどこなの?」
私はふたりに聞いてみた。
「クラウベルクだよ。私の屋敷だ」
えっ? ライムントは王宮に住んでいたのじゃなかったの?
トルデリーゼを見るとふふふと笑っている。
「ライムント殿下はあなたを誘拐したの」
誘拐?
「バウムガルテン王国に置いていたら、また女王にされるだろう。だから眠ったままのあなたを連れて移動魔法でクラウベルクに戻って来た。バウムガルテン王国の人は移動魔法使えないから、追いかけてこれないしな。まぁ、追ってはきたけど、幻影魔法で惑わされて我が国には辿り着けないようにしたからあいつらはぐるぐるまわっているだけだ」
ライムントは苦笑いしている。
「とにかくここは安全だ」
本当にライムントなのか? またライムントに化けた神様じゃないの?
「本当にライムントなの?」
私の言葉にライムントはめをぱちくりさせている。
「本当に決まっているだろう? なぜそんなこと……」
明らかに私の言葉で落ち込んだライムントにあの時のことを話すことにした。
「あの時、ライムントに化けた神様に私は天界(多分)に連れて行かれたの。どこから見ても間違いなくライムントだったわ。だからまた神様が化けているのかと……」
「神様だったの?」
トルデリーゼが驚いた表情で私を見ている。そういえばあの時、トルデリーゼはあの場にいた。その時の記憶もあるのだな。
「リーゼ、どれくらい記憶があるの?」
「みんなあるわ」
「あの時、天界で神様にときを戻して欲しかったと言ったら、みんなが時を戻しすぎて歪みが出ているので戻せない。だから時を進めると言われたのよ」
私の言葉にトルデリーゼは頷いた。
「私が思うに、それが神様だとするなら、きっとこの世界もあの世界もどちらも本当に存在する世界なんじゃないかしら? 何かの本で読んだことがあるような気がするわ。神様の戯れで時が戻るたびに新しい世界が生まれるって、だから7歳のエデルがいた世界もあのままあるのかもしれないけど、神様が時をすすめ、歪みを戻したから消えたかもしれないわね。私は呪いが解けても9歳から成長していくと言われていたけど、今のこの世界では実年齢に戻っていたわ」
難しい顔で話を聞いていたかライムントがふっとため息をついた。
「どちらにしても、今この世界が私達がいる世界だ。その君達がいう世界のことは置いておいて、今の世界を生きよう」
確かにそうだな。
「私が眠っている間の話を聞かせて?」
私はふたりに願った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます