第26話 犬猿?
私はトルデリーゼの書いた魔法陣から湧き出た光に包まれた。身体全体が繭に包まれたようになった。
繭から光がどんどん私の身体の中に入ってくる。
目が開くようだ。パチパチ瞬きをしてみる。指が動くみたいだ。手をグーパーしてみる。
さっきまでカチカチだった関節が柔らかくなってきた。
私動けるかも?
「あ…ぁ…」
声も出そうだ。
「エデル!」
ライムントがトルデリーゼを突き飛ばして私の手を取った。
トルデリーゼは目を釣り上げ鬼のような顔をしている。
「あなたねー! まずは賊を捕えなさいよ! 私が来なかったらエデルはまた殺されていたのよ!!」
ライムントはぐるぐる巻きになって転がっているミアをチラリと見た。
「仲間か?」
ミアと仲間呼ばわりされたトルデリーゼはライムントの鳩尾にパンチを入れた。
「あなた馬鹿なの! どこが仲間に見えるのよ! そんなことだから、犯人には逃げられるし、エデルを助けることもできないのよ!」
なるほど、ミアに逃げられたのか。捕まえたんじゃなかったの? 子供になった時は殺されたとか言っていたような……。
「なんだと!」
鳩尾を押さえてうずくまっていたライムントが顔を上げ、トルデリーゼに殴りかかろうとしたが、固ってしまった。魔法か?
「エデル、2年も辛かったわね。もっと早く気づいたらよかったわ。神様も意地悪ね」
「き…おく、ある…の?」
まだ上手く言葉が出ない。
「もちろんよ。さっきみんな思い出したの。ライムント殿下は前も今もポンコツね。あっ、今が前か? ややこしいわね」
トルデリーゼはくすりと笑って私の手を取った。
「早く魔法封じしないとまた消えるわよ!」
トルデリーゼに急に魔法を解かれたライムントはつんのめり転んだ。
「この野郎!」
「さっさとしなさい! 天才魔導士!」
トルデリーゼに揶揄われながら、ライムントはミアの腕と足に魔法で出した、魔法封じのリングを着けた。
「地下牢に入れておけ!」
騎士達に命じたライムントはトルデリーゼの手から私の手を奪い取った。
「エデル、良かった。本当に良かった」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられた私はトルデリーゼに目で助けを求めた。とうやら今は念話は使えないようだ。
「あなたさ、我がクラウベルク王国がほこる天才魔導士なんでしょ? ふん。ぱっとしないわね」
「なんだと!」
今の世界ではトルデリーゼとライムントは犬猿の仲らしい。
「姉上、目が覚めて良かった。もう大丈夫ですよね? また女王に戻ってくださいますよね?」
弟で多分現国王のアーベルがどさくさに紛れ私の傍に来た。今、それ聞く?
「嫌」
そう言うと私は再び目を閉じた。
***
短くてすみません。
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