第24話 神様ってそんなだったの?

 あれ? ここはどこ? 確か私はライムントと一緒に移動魔法でバウムガルテン王国に戻ったはずなのに。


 そうだ、ライムントはどこ? 


「ライ! どこなの?」


 私はライムントを呼んだ。辺りを見渡したがライムントはいない。それどころかここには誰もいない。


 ここは森だろうか? 陽当たりが良く気持ちがいい。しかし、こんなところでのんびりしている場合ではない。私はバウムガルテン王国に戻らなくてはならない。リュディガーが心配だ。


「ライ! ライ!」


 何度も呼んでみるが返答はない。


 そうだ! これだ。私は魔石を思い出し、胸の魔石を握りしめてライムントを呼んだ。


「ライ! 来て」


 あの時は魔石が輝き、すぐにライムントが出てきた。だが、今は魔石は何の反応も示さない。


 もう、ライムントのことは置いといて、とりあえず私だけ移動魔法でバウムガルテン王国に戻ろう。

 移動魔法を発動したが、うんもすんもない。魔法が使えないようだ。


「ここでは、魔法は使えないよ」


 急にライムントが現れた。


「ライ! どこにいたのよ。ここはどこ? バウムガルテン王国に行くんじゃなかったの!」


 私はライムントに文句を言ったが、ライムントはどこ吹く風だ。


「ふふふ、バカだな。だから人間は嫌なんだ」


 は? ライムントどうしたんだ?


「私がまだライムントだと思っているのか?」


 ライムントはそう言うと白い煙のようなものに囲まれ見えなくなった。そして煙が消え、現れたのはライムントとは全く違う白い服を着た若い男だった。


「つまらないよ。せっかく願いを聞いて生き返らせてあげたのにさ。君は何もしないし、周りは相変わらず君頼りだし、君もなんだか不本意みたいだしさ」


 願いを聞いて生き返らせてあげた? こいつは誰だ? まさか神?


「あなた神様なの? なぜライムントに化けて私を連れてきたの?」


 男はふっと笑った。


「やっとわかったの。私は神だよ。ライムントに化けたのは君が1番信用してるからかな。君に提案があったから呼んだんだよ」

「提案?」

「そう、提案さ。あの時君は私に生き返らせろって言ったでしょ? あれを私は転生させろって言ったと思ったんだ。でも、転生後の君を見ていたら……ほら、君よくひとりで文句をいってるじゃない? 生き返らせろとは言ったけど生まれ変わらせろとは言ってないって。勘違いしちゃったのかなってね」


 勘違いだ。完全に勘違い間違いない。やっとわかったのか。


「それで、君の生き返らせろってどんなニュアンスなのか考えてみたんだ」


 ニュアンスって何だ? ややこしい神だな。


「まず1つめ。あのままあの状態で生き返る。と言うか死なずに助かる。そして2つめは時を戻す。どれくらい戻せばいいだろうな。式典の前の日くらいか、それともいっそ、エアハルトが、ミアに出会う前あたりか? いや、もっと前、7歳くらいの時か」

「それよ! 私は時を戻して欲しかったわ。私の願いはそれだったのよ!」

「やっぱりそうか。申し訳ない。それはできないんだ。他の神が時を戻し過ぎてあちこちに歪みが生じているんだ。これ以上時を戻すとこの世界の歪みが酷くなる。君の友達のトルデリーゼはその被害者だ。彼女は時戻りの歪みを受けて9歳から成長できなくなった。呪いだなんて言われているが歪みなんだよ。そんな人間が他にも沢山いる。君の世界はすでに何度も時戻りしているからね。もう無理なんだ」


 何度時戻りしている? いつ誰がもどしたのよ。


「つまらないから反対に時を進めようと思うんだ。ちょうどそれなら歪みも解消できるしね。そこで君なんだけど、本当は今の世界には存在しない人間なんだよ。言わば、君はアーベル夫妻の娘の魂を乗っ取ったようなものだ。本来の娘は君ではなかった。君が生き返らせろと言うから無理に突っ込んだんだよ」


 神様の言っていることは理解できるが、それなら元の魂はどこに?


「元の魂が気になるか?」

「ええ」

「元々王女に生まれるはずだった魂はまだ魂のままだ。君の娘にでもしようかなと思っていたのだけれど、それもつまらないから元々の器に戻そうかな」


 それって私はどうなるのよ。


「私はどうなるの?」

「だから、君は君に戻すつもりだよ」


 つまりそれは?


「その1。ただ歪みを解消する為に時間をちょっと進めるよ。あの時君は死なずに10年経った今の世にする。今の君はいない。アーベルの娘は本来の魂が戻り、別の人格になる。まぁ、普通の9歳の王女になる。歪みが解消されるからトルデリーゼも永遠の9歳の呪いは解ける。君は死ななかったでも生きてもいなかった。そうしよう。それから面白いな。じゃあ、またつまらなくなったら呼ぶからね。次は私を楽しませてね」


 神は私にウインクをした。


 どういうことなのだろう?死ななかったが生きてなかったって?


 私は腕組みをし首を捻ったがわからなかった。


 風が吹き、身体がスースーしてきた。ふと地面を見ると足から順に消えてきている。私、またどこかに行くんだわ。死ななかったが生きてなかった場所に行くのか?


 あの時死んでなかった10年後の世界?


 もう、どうにでもなれ! 私は腹を括り目を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る