第23話 消えた
クラウベルク王国の魔法学校で楽しく過ごしていた。最初は冷ややかだった零時達もライムントの婚約者だと認識してからずいぶんおだやかに対応してくれるようになった。
魔法学校は貴族も平民も関係ないので、社交する必要もなく楽だと。ただやはり、何人かのライムント狙いの行き遅れやで戻りの令嬢方からは小さな嫌がらせをうけることもある。
まぁ、ほんとに些細なことだ。殺そうなどと思うような人はいないと思う。
では、黒幕はクラウベルク王国にいる人じゃないのかな。クラッセン王国か?
久しぶりにライムントとふたりでお茶会中だ。
トルデリーゼやハウルが参加しようとしたが、ライムントが強力な結界を張った。
「てめーらみたいなガキンチョが私に挑むなど100年早いわ!」
オトナゲナイ。
いきりたつライムントを見て私はため息をついた。
「それで話は何なの?」
私はライムントを見つめた。
「エデルに見つめられるのは久しぶりだな」
ライムントは真顔だ。
「だから話は何?」
わざとゆっくりと話す。
「ごめんごめん。つい」
ライムントは小さく深呼吸をし、小さな声で話し出したた。
「リュディーが狙われた」
「えっ?」
「警護はしっかりしていたのだが、ちょっとした、隙をつかれた」
「それでリュディーは大丈夫なの?」
まさかリュディガーが狙われるとは。狙いは私ではないのか?
「馬車の事故でかなりの大怪我だったが、魔法医師と看護師と魔導士が、治した。ただ従者が亡くなった」
従者が……。
リュディガーの従者は前の私の時に私に、エアハルトについていた人だ。あの時、エアハルトに苦言を呈し、「お前など首だ!」と言われ、エアハルトから離れた。
彼があのままエアハルトの傍にいたら、魅了はもっと浅かったかもしれない。
「何故助けられなかったの!」
私はライムントに詰め寄った。
「即死だったそうだ。馬車に落石があり、彼はリュディーを守ろうと覆い被さったまま事切れていたらしい。魔法でも死んだものを生きかえらせることはできないんだ」
悔しそうに奥歯を噛んでいるようだ。
「でも落石なんてどこを走っていたの?」
王都には石など落ちてくるところはないはずだ。
「それが、王妃の実家の公爵家に行った帰りなんだ。公爵家から王宮の間に石が落ちてくる場所などない。それに馬車は守られていた」
「魔法?」
「それしかない。そんな魔法が使える者がいるのか?」
難しい魔法なのか?
「その魔法使いはライやリーゼより上なの?」
「わからない。魔法は組み合わせれば新しい魔法が生み出せる。何もない空間にデカい石、いや岩を出すことはできなくはないだろう。ただ、そんな奴は知らない」
ライムントは目を伏せた。
「とにかく一度バウムガルテンに行こう。私も一緒に行くから」
「そうね。戻りましょう。向こうの様子が気になるしね」
私は頷き、そのまま移動魔法でバウムガルテンに戻った。
◆◆ ◇トルデリーゼ視点
「あれ? エデルは?」
呑気そうな顔でライムント殿下が歩いてきた。
「あれって、さっき私達からエデルを引き離して、結界を張ったくせによく言うわよ」
「全くだ。叔父上、結界なんか張って何をしていたんですか?」
ハウルの言いたいことはよくわかる。
私達の言葉にライムント殿下は首を傾げた。
「お前達、何を言っているんだ。私は今まで魔法省にいたんだ。今、移動魔法で学校に戻ったところだ。エデルが私と?」
ヤバい。やられた。
私はすぐに念話でエデルガルトに話しかけたが返答はない。移動魔法の残像も追ってみたが、残像はすでに消されていた。
「まさか! お前達がついていて何をしているんだ! 100人の影は何のためについているんだ!」
ライムント殿下の怒鳴り声は学校中に響き渡った。
まさか、私達の目の前でエデルガルトが消えるなんて。
「そうだ。魔石よ。エデルは例の魔石を持っているわよね。きっとライムント殿下を呼ぶわ」
「その前に殺されていたら……」
「縁起でもないなことを言うな!」
ハウルはライムント殿下に殴られた。
「とにかくエデルからの連絡を待つしかないわ」
「そうだな。父上に知らせよう」
ハウルの言葉に頷く。
「バウムガルテンには?」
ハウルの言葉にライムント殿下は険しい顔をしている。
「あちらに知らせてもあたふたするだけだろう。もう少し様子を見よう。トム、ジェリー、いるか?」
「はい」
ライムント殿下の足元にトーマスとジェフリーが移動魔法で飛んできて跪いている。
「お前達、すぐにクラッセン王国に行け」
「御意」
ふたりは姿を消した。
「クラッセン王国?」
私はライムント殿下の顔を見た。
「わからない。でもなんだかリアと一緒に来たクラッセン王国の奴らの匂いがするんだ」
匂い?
「リア、そうなの?」
私はテレーザリアの顔を見た。
「わからないわ。ただ、結界を張っていた場所……」
「場所がどうしたんだ!」
ライムント殿下が怒鳴る。
「つ、土が……」
よく見ると土が赤い。
「これはクラッセン王国の北にある山の土かもしれない。私は本でしか読んだことがないのではっきりしたことは言えませんが、北の山の土は赤いので山が赤いとそしてその土は独特な匂いがするので付近に住んでいたものは匂いが染み付いているのですぐに北部出身だとわかると本に書いてありました」
テレーザリアは震えながら答えた。
まさか、私の精神拘束魔法が解けたと言うのか? それでエデルガルトを拉致したのか? あの魔法は一生解けないはずだ。
「とにかく、エデルがどこにいるかまだはっきりとはわからないなら、トーマスとジェフリーからの報告を待つしかないわ。私も密偵鳥をあちこちに飛ばしてみるし、とりあえず落ち着きましょう」
ヤバい事になった。
私は頭を抱えた?
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