第22話 仲良くおしゃべり(それぞれ視点あり)
テレーザリアがクラウベルク王国の魔法学校の魔法医師科に通うことになった。ハウルはクラッセン王国の奴らに見つからないかと心配していた。
「多分大丈夫です。私と母は隔離されていたので、だれも私の顔をきちんと覚えていません。それに髪も短くしたし、名前もリアにしたので、きっとわからないですよ」
テレーザリアは長かった頭を短くした。クラッセン王国では女性は髪が長いのが当たり前だが、クラウベルク王国では皆好きな髪型をしている。なので、気分転換に顎のラインで切り揃えた。
「そっか、ならいいけど、魔法医師科にも誰か潜入させとかなきゃな」
ハウルの言葉にトルデリーゼはくくくと笑う。
「エデルは抜かりないわ。魔法医師科にはジェリーを置いたわ。トムは魔法科だからふたりは離れちゃったけどね」
ジェフリーはああ見えてなかなかしっかりしている。身体は小さいがすばしっこいし、頭もいい。手先も器用なので魔法医師になるのも悪くない。トーマスは身体が大きくておおらかで優しい。そして強い。トルデリーゼとも仲がいいので私の傍にいてくれている。
テレーザリアが嫁いでくる時に、クラッセン王国からバウムガルテン王国を守るために一旦はバウムガルテン王国に戻ったが、テレーザリア母娘のことが片付き、また、ライムントと共に私の警護のためにクラウベルクに戻ってきてくれた。
まぁ、ふたりとも魔法で姿を変えているので正確には戻ったのではなく、新しく入学したのだが。
いったいふたりはいくつなんだろう? ほんとに魔法は恐ろしい。
「ハウルはひとりで大丈夫なの?」
トルデリーゼは半笑いで聞く。
「影が大量についてるからな。まぉ、兄上の比ではないけど」
「あの、エデル様?」
テレーザリアが不安そうに話しかけてきた。
「何?」
「あの方はどなたなのでしょうか?」
そういえば誰もハウルを紹介していなかった。
「彼はこの国の王太子の息子。つまり国王の孫。2番目だから次の王太子にはならないわ」
テレーザリアは目を丸くしている。
「王家の方ばかりで……」
「もう、リアだって王女じゃない?」
トルデリーゼが突っ込む。
「やめてください。私は子爵の孫です」
嫌なのだな。でもいくら嫌でも実の父なのだから仕方ない。
「乗り越えられるといいな」
ハウルがテレーザリアの肩をポンと叩いた。
乗り越えるか……そうだな、乗り越えられるといいな。
「リア、この国の魔法学校はみんな名前で呼び合うの家名はなし。それが嫌な人は貴族学校に行くのよ。魔法学校は身分は関係なくやりたいことを学び、それを仕事につなげたい人が来るの。リアは魔法医師になるんでしょ? ハウは騎士に私は魔導士、エデルは普通のお嫁さんよね?」
トルデリーゼ、私をオチに使うな!
「えっ、エデル様はいずれクラウベルク王国の王妃様になるのでは?」
「ならないわよ!! 私は王妃とか女王とかそんなものには絶対ならないの!」
「そんなにムキにならなくてもいいじゃないか。今のを聞いたら兄上は悲しむぞ」
「ビアンがなんで悲しむのよ! それにリア! 様いらないわ! エデルでいいからね」
私は地雷を踏まれ頭に血が上った。オトナゲナイとはわかっているが、本当に女王も王妃も嫌なのだ。
「兄上はチャンスなしだな。ふふふ」
「あんたもないと思うけどね」
ハウルとトルデリーゼが何やら言い合いをしているが聞こえないふりをしておこう。
「リア、楽しい学校生活にしましょうね」
私がテレーザリアに向かってにっこり笑うとテレーザリアは若干ひきつった笑顔で頷いた。
―テレーザリアー
まさかクラウベルク王国のハウル王子も仲良しだなんて驚いた。
侍女だとばかり思っていたトルデリーゼ様が公爵令嬢だったのにもびっくりした。
そして、ファビアン王子の婚約者だと思っていたエデルガルト様はライムント殿下の婚約者だそうだ。なぜ20歳位年が離れているのに婚約者なのだろう? みんななんだか不思議だらけだ。
私なんかがこんな中にいていいのだろうか? 恐縮してしまう。
エデルガルト様とトルデリーゼ様はなんだか大人みたいな時がある。
ハウル王子が「こいつらまぁまぁおばさんだからな」と言って扇子でトルデリーゼ様に叩かれていた。
私大丈夫かしら? だんだん不安になってきたわ。
でも頑張らなきゃね。みんな変だけどいい人だし。
うん。がんばろう。頑張って魔法医師になるぞ! そして、あいつらに復讐するんだ!
―ハウルー
最近、エデルガルトをトルデリーゼに取られっぱなしだ。私も騎士科ではなく魔法科にすればよかったかな? でもいずれ臣籍降下する私は若いうちは騎士として身を立てたい。
エデルガルトはやはり叔父上なのかな? いくら生まれ変わっているといっても今は7歳なんだし、30前の叔父上では変だよな。私とはひとつ違いだしちょうどいい。
王妃になるのが嫌なら、私がぴったりだと思うだけどなぁ。
アロイスはまぁ、大丈夫だろう。
王妃にならないということで兄上をリードした。あとは叔父上に勝たなければ。
それにしてもテレーザリアは苦労したのだな。クラッセン王国の国王にはいずれ痛い目を見てもらおう。
うちには暗部のダウム家がある「ダウム家が本気を出せば王家なんて消え去るよ」と父は言っていた。
だから私とダウム家の娘のトルデリーゼを結婚させようと思っているようだが、勘弁してくれよ。
あいつは本当は叔父上とあんまり年が変わらないはずだ。私は秘密を聞いてしまった。誰にも絶対言わない。言えない。ダウム家の呪いらしい。
トルデリーゼと叔父上が結婚すれば良い。そしたら私はエデルガルトと結婚できるものな。
力をつけて、クラッセン王国をやっつければエデルガルトも私を好きになってくれるかな?
よ〜し、毎日の鍛錬頑張るぞ!
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