第15話 縁談
クラウベルク王国に留学して半月程経ったある日、母ローザリアから伝書バードで連絡をもらい、移動魔法を使ってバウムガルテン王国に戻ってきた。
「エデル、クラウベルクはどう?」
「毎日楽しいわ。魔法も奥が深いし。こっちは?」
「相談があるからきてもらったのよ。アルに縁談が来たわ。相手はクラッセン王国の第2王女王なんだけど、何だか気になるのよ」
母は困った顔をしている。クラッセン王国か。確か前のエデルガルトにも縁談を申し込んでいたような気がする。
「アルはまだ5歳なのに縁談なんてね。それに相手の王女は8歳なのよ。クラッセンは今すぐにでも娘をそちらにやれるのでバウムガルテンで王太子妃教育をして欲しいと言うの」
「確かに変ね。バウムガルテンに入り込みたいだけじゃないのかしら?」
「そんな気がするわ。きっと王女と一緒にいろんな人が入ってくるだろうしね」
国王のアーベルはどう言っているのだろう?
「アーベルは何て?」
私の問いに母は呆れたように笑った。
「『エデルに聞いてくれ』だって」
あの馬鹿。
「お父様は?」
「エデルに……」
馬鹿親父と馬鹿息子ね。
「お母様はどうするつもり?」
「お母様って私?」
「あなたに決まってるでしょ、あれはお祖母様」
私の答えに母ローザリアはふふふと笑う。
「ややこしいわね。私は断りたいわ。そうでなくてもこの国に人は危機管理が甘いのに、クラッセン王国なんて怖いわ。でもどう断れば良いわからないの。断ったことを根に持って攻められつも困るしね」
母の言うこともわかる。私は母の顔を見た。
「もしも私を暗殺したのがクレッセン王国だとしたら、我が国を乗っ取りたいのでしょう。アルなら傀儡できると思ったのね」
前の時はエアハルトを取り込み、傀儡し、国を乗っ取ろうてしたようだが、エアハルトは失脚し、私が矢面に出た。私は婚約者がいたし、どうにもならない。とりあえず暗殺し、アーベルを取り込もうとしたのか?
ミアは「私はヒロインよ」とか訳のわからないことを言っていたが、本当のところ黒幕に操られていたのか? 黒幕は誰なのか? 全く闇の中だ。
「面白いから受け入れてみたら? その令嬢見てみたいわ」
私はニヤリと笑った。
「あらまぁ、エデルガルトちゃんは悪趣味ですこと」
母もおどけた口調で口角を上げる。
私は以前トルデリーゼから聞いたことを思い出した。
「そういえば、以前にクラウベルク王国の友達から聞いたのだけれど、あの国の王族は精神拘束魔法を無効化する魔法を植え付けられているそうなの。アルやリュディーにも植え付けてもらえないかライに聞いてみるわ」
母は目を見開いた。
「さすが魔法大国はすごいわね。アルとリュディーだけじゃなく、アーベルとお義父様にもお願いしたいわ」
「確かに」
我が国はクラッセン王国の第2王女をアルフレッドの婚約者候補として受け入れることにした。あくまで候補だ。
そして、その前に王家の男には魅了の魔法避けの処置をした。
「ライ、アル達が魔法避けの処置をしたことは内密にね」
「あぁ、クラッセン王国が黒幕なら何か仕掛けてくるだろう。バウムガルテンにはうちの暗部で修行した影が沢山いるが、トムとジェリーもひと足先にこちらに戻す。私も行ったり来たりするつもりだ」
ライムントは頼りになる。我が国にとってなくてはならない人になっている。バウムガルテンでも必要とされているし、いずれはクラウベルクにもどるのだろう。今のうちにバウムガルテンも人材を育成しておかないとならないな。
それにしてもトーマスとジェフリーは頼りになるのだろうか?
「私はリーゼがいるから大丈夫よ。クラッセン王国の第2王女が来て、しばらくはこちらにいて欲しいわ」
私の言葉にライムントは眉根を寄せた。
「ずいぶんリーゼを信用しているんだな」
「女同士だから……」
「女同士か。まぁ、男よりはましだな。わかった。でも何かあったらすぐに移動できるように必ずこの石を身につけておいてくれ」
ライムントは自分の瞳と同じ色の魔石のペンダントをくれた。
第2王女が来るのはまだ先なのに用意周到だな。
学園内はトルデリーゼや100人の影が目を光らせているし、私も護身術や防御魔法を学んでいる。
影の報告では、私が気が付かない程度ではあるが、危害を加えようとする輩は速やかに処分しているらしい。
それにマウント令嬢はあれ以来現れなくなった。
今のところ、クラウベルク王国に黒幕はいないような気がする。
ライムントと話していると、トルデリーゼから伝書バードで知らせが来た。
「淋しいから早く戻ってきて〜」
「承知」
私も伝書バードを飛ばした。
「そろそろクラウベルクに戻るわね」
「私も一緒に戻るよ」
私はライムントと一緒に移動魔法でクラウベルクに戻った。
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