第11話 トルデリーゼに会いました
もうすぐ魔法学校の新学期が始まる。私は二度目なので、特に緊張もしないでのんびりしているのだが、王宮に居候していると面倒くさいことが色々ある。
今日は以前ベルミーナが言っていたお茶会だ。朝からまたベルミーナ自慢の凄腕侍女軍団に磨きあげられる。まだ7歳なのに勘弁してほしい。
前世のエデルガルトはこんなに外見は磨き上げられなかったな。きっとベルミーナがお洒落さんだからだろう。
妃殿下とベルミーナは私を着飾らせることを楽しみにしているようだ。まぁ、それも人助けみたいなもんだし、徳を積むつもりで頑張ろう。
今日のお茶会は、きっとファビアンやハウル、アロイスの婚約者候補になりたい令嬢やその親がわんさか来るのだろう。参加するの面倒くさいなぁ。
やはり、ファビアンが一番人気かしら? でも、なぜみんな王太子妃になんかなりたいのだろうか?
私は王太子妃教育は受けてはいないけど、ローザリアを見ていたから知っている。王太子妃になるのはとても大変だ。ローザリアは本当によく頑張っていた。
まぁ、王太子教育はもっと大変なのだが、今して思えばエアハルトは、イマイチデキが良くなったから、賢いローザリアを早くから婚約者にして王太子妃教育だけでなく、王太子教育も受けさせていたような気がする。
だからアーベルが国王になってもなんとかなるのだろう。
アーベルがダメな訳ではないが、ずっとエアハルトが王太子だったのでアーベルは公爵になるはずだった。だから普通の王子教育しかうけていない。私が生きていれば女王補佐をしながらのんびり暮らせるはずだったのに。あれはあれで可哀想だ。
ぼんやりそんなことを考えていたらお茶会の支度が出来上がった。
「エデル様、できましたよ。今日もめちゃくちゃ可愛いです。外見はまさに天使です」
メアリーが褒め称える。しかし、外見はって何よ。中身は確かに天使とは程遠いけど。
今日はパステルピンクのふんわりしたドレスだ。自分で言うのもなんだが、前世のエデルは子供の頃から美人だった。しかし、背が高く細身であまり女の子らしい感じではなかったな。 騎士団と一緒に鍛錬もしていたので筋肉質だったし、強そうとか、怖そうとか、しっかりしている、頼りになるなどとよく言われたが、可愛いなどとお世辞にも言われたことはない。
今のエデルは7歳にしては小さい。小柄で丸い感じだ。前世で着たくても着られなかったふわふわフリフリの甘いドレスがよく似合う。まさに着放題だ。
「ねぇ、メアリー。前の私ならこんなドレス似合わないわよね?」
「はい。笑われます」
メアリー、そこはそんなことないですと嘘でも言ってよ。
「神様のギフトでしょうか? 今度は中身は怖いままで見た目は可愛くしてもらって良かったですね。これで殿方を騙し放題です」
メアリーの毒舌に返す言葉もない。
「さぁ、参りましょうか? 皆さんお待ちですよ」
メアリーはにこやかに私を促す。
まったくもう。私は7歳なのよもう少し優しくしてよ。
「エデル!! 可愛いわ!」
ベルミーナは私をぎゅっと抱きしめる。
「ベルだめよ。せっかくのドレスにシワがよるわ」
そう言って妃殿下は私のベルミーナから私を奪い取りドレスのスカートを直す。
「もう二人ともエデルを取り合いするのはやめてもらえませんか。エデルは私の婚約者なんですよ」
ライムントも参戦してきたか。
「叔父上、今日は10歳以下の子供しか参加できませんよ。叔父上は保護者席で見守ってくださいね」
ファビアンが意地悪い感じでライムントに告げる。
面倒くさくなった私はそ〜っと部屋を出た。
あ〜ホントに面倒くさいわ。
「エデルガルト様、生まれ変わっても大変ですね」
ベルミーナの侍女のカレンが声をかけてくれた。
「本当に面倒くさいわ。こんなことならクラウベルクに来るんじゃなかったわ」
私は苦笑する。
「まぁまぁ、そうおっしゃらずに。前のエデルガルト様は近寄りがたい感じがありましたが、今のエデルガルト様は柔らかくて近寄りやすい感じですよ」
カレンは優しく微笑む。カレンは前の私をよく知っている。
「エデル、行こう!」
カレンと話しているとアロイスが飛んできた。そうねアロイスのエスコートがいいわね。
「ダメだよ。エデルは私と!」
「いや私だ」
「今日はアロイス様にエスコートをお願いします」
私は可愛く上目遣いで言ってみた。自分で言ったくせに気持ち悪い。
「仕方ない。アロイスならまぁいいか」
ハウルはそう言って先に行ってしまった。
「じゃあ今日はアロイスに頼むか」
ファビアンはアロイスの肩をポンと叩いた。
「あとで一緒に菓子を食べよう。じゃあ」
ファビアンも行った。
「私達も行きましょう」
私より少し背が低いアロイスはあざと可愛い笑顔を振り撒く。いよいよお茶会だな。
今日のお茶会は中庭で行われる。クラウベルク王国の伯爵家以上の貴族の子供達が集まっている。
やはりどの親も自分の娘と王家の3王子の誰かをなんとか縁続きしたい思惑が見え隠れしている。
アロイスにエスコートされ、妃殿下とベルミーナの傍にいる私は悪目立ちしているなぁ。
これは、先手必勝だな。
「こちらはバウムガルテン王国の王女のエデルガルト嬢だ。これから2年間我が国の魔法学校に留学する予定だ。みな同世代だし仲良くしてほしい」
ギルベルト様が紹介してくれた。
「エデルガルト・バウムガルテンでございます。ライムント殿下と婚約させていただいております。いずれこの国に嫁いで参る予定です。皆様お見知りおき下さいませ」
年季の入ったカーテシーで皆を唸らせる。ライムントの婚約者と言ったからか、令嬢達の目つきが優しくなったようだ。
とりあえず自分の席に座ると、ベルミーナが落ち着いた色合いのドレスを着た、スレンダーで大人っぽい令嬢を連れてきた。
「エデル、紹介するわ。トルデリーゼよ」
「トルデリーゼ・ダウムと申します。リーゼとお呼びください。よろしくお願いします」
おぉ、この人が噂のトルデリーゼか。彼女は味方だと直感が働く。
「エデルガルト・バウムガルテンです。エデルと呼んでくださいませ」
貴族の嘘笑顔ではなく普通の笑顔で挨拶をした。
「じゃあ、私は見守り席に行くわ。二人で話してね」
ベルミーナはニコニコしながら見守り席に戻って行った。
令嬢達はそれぞれお目当ての王子の周りを囲んでいる。
「リーゼ様はファビアン様やハウル様のところに行かなくてもいいのですか?」
私はトルデリーゼに聞いてみた。するとトルデリーゼは口角を上げた。
「興味ございません。ファビアン様やハウル様のことは幼い頃から存じ上げておりますが……」
少し間が開いた。
「ここだけの話、あんまりぱっとしないでしょう? なんだか残念な感じだし。私はいりませんわ」
「ハハハ。リーゼ様面白い」
「エデル様も面白いですわ」
なんだか意気投合してしまった。
それから私達はお茶会のお菓子をたらふく食べ、果実水をガブガブ飲み、遠くから王子達にまとわりつく令嬢を値踏みし楽しんだ。どうやらトルデリーゼは令息方から怖がられているようで遠巻きに見られてはいるが誰も寄ってこない。
もしや、みんながトルデリーゼを紹介すると言っていたのは虫除けの為だろうか?
トルデリーゼは私より2歳年上の9歳だそうだが、とても話が合う。ひょっとして29歳の間違いじゃないかと思うくらいだ。
「リーゼ様、ほんとは29歳ではないのですか?」
「まさか。そんなわけないですわ」
トルデリーゼは怪しくふふふと笑う。
私達はお茶会が終わった後もまた会う約束をして会場を後にした。
***
すみません。明日はお休みです。明後日またよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます