第28話 福岡県民、敵に会う。

 



 どうやら、お母様は副団長を煽りまくっているらしい。

 どういうこっちゃと首を捻っていると、副団長が諦めの表情で説明してくれた。


 副団長の父――国王陛下の又従姉妹にあたるお義母さま。

 幼い頃は副団長の教育係だったそうです。


「ほぼ団長が私の世話をしていたようですが」


 ――――ヲイ、お義母さま。


「懐かしいなぁ。おむつ替えには苦労したなぁ」


 団長が思ったよりもイクメンなことが発覚した。

 そして、お義母さまは、副団長の母のつもりらしく、団長や家族の近況報告を手紙という名の報告書にして、送って来るそうだ。

 男兄弟って、そんなに私生活話さないでしょ? とかいう謎の論理から。


「これだけ側にいれば、大概は気づくんですがね。まぁ、今回はいい働きでした」


 副団長のお母様は産後の肥立ちが悪く、副団長が六歳の頃に亡くなられたらしい。

 なるほど、だからこそ『母親のつもり』なのか。とは思ったけれど、あの報告書は無いな。と思った。


「とりあえず、嫁入りしたらエグかことになりそうやけん、今のうちに阻止する」


 決意表明をすると団長が机に俯せで倒れてしまった。


「うわぉ、どげんしたと?」

「今日はもう仕事にならん」

「いや、働けや」


 とりあえず、ご機嫌は直ったらしいので、後頭部をベチコンと叩いておいた。




 夕方、そろそろ終業時間だというのに、団長に来客があった。

 その人物を見るなり、団長は表情を失い、副団長はげんなりとした顔。

 そして、高笑いをする真っ赤なドレスと真っ赤な口紅のご令嬢。

 嫌な予感しかしない。


「あーっはははは! こんっ、こんな子供が婚約者ですの⁉ 慌てて来た私が馬鹿みたいではないですか! おなっ、お腹が痛いですわっ!」


 高笑いが爆笑に変わった。

 予想どおり、嫌な人っぽい。

 

 ――――コイツ嫌い。


 何だか気に入らないので、完全に敵認定することにした。



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