第27話 福岡県民、個人情報保護法求む。

 



 曇天の空の下、プンスコ団長と隣同士で馬車の中。

 王城まではまだ二十分ほど掛かってしまう。

 何か話そうかなぁとも思うけれど、プンスコ団長に寄り掛かってぼぉっと外を眺めるのもわりと楽しいので、プンスコは放置。


 繋いだ手をスリスリと撫でたり、キュッキュと揉んだりしていた。暇なので。


「カリナ?」

「へ? なん?」

「機嫌、悪いのか?」

「はい? 団長がやろうもん」

「いや、うん。そうなんだがな」


 私が何も聞かないし言わないから、ちょっと不安になっていたらしい。

 可愛いじゃないか! と悶えていたら、王城の馬場に到着した。


「ウチ、部屋で着替えてから行くけん」

「ん。わかった」


 ルンタッタとスキップしつつ、使用人棟に戻ると、出勤前のお姉様方に詰め寄られてしまった。


「団長、どうだった⁉」


 キラキラとした笑顔でそんなことを聞かれても。

 どうだったとは何のことなんだろうか。……とかカマトトぶれはしないけれども。


「どうって、なんが?」

「外泊したって皆に知れ渡ってるのよ? 包み隠さず話しなさいよぉ!」


 知れ渡っているらしい。個人情報保護法プリーズ。


「なんもなかよ。雷雨が酷かったけん、団長のご両親が泊まりなさいって言ってくれただけやもん」

「ええ? あんなに女泣かせで噂がある団長がぁ?」


 ――――おぉぉぉ?


「異性と付き合ったこと、なかごたっけど?」

「なかごた?」

「あー。付き合ったことないみたいだけど」

「え? でも、最低でも八人はご令嬢とか侍女とかと噂が流れていたわよ? お見合いも沢山されてるし」

「おぉぉお?」


 それは聞いていない。

 聞いていないからといって、それに対して文句は言わないけれど。少しだけ、寂しくは思ってしまう。

 自分も話していないのに。

 なんて自分勝手なんだろうなぁ、と少しだけ反省した。




 サクサクと仕事をしていたら、副団長から手招きされた。

 なんだろうなぁ、雑用かなぁとか考えつつ近付くと、ガシッと襟首を掴まれた。

 扱いが雑過ぎないだろうか。


「伯母上から連絡があったのですが」


 ――――連絡⁉


「同衾したと」

「ふぁっ⁉」

「はぁぁぁ⁉」


 団長にも丸聞こえだったらしく、彼が驚愕したコエガ後ろから聞こえてきた。


「あぁ、なるほど。その反応は、何もなかったんですね」


 ――――え? カマかけ?


「いえ、手紙が来ましてね」


 ぺらりと差し出された手紙には、昨日のお昼からの私達の行動が時系列で報告書のように書かれていた。

 お義母さまが謎すぎる。



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