第12話 福岡県民、嫉妬される?
貴族のルールをほとんど知らない。
テレビや映画でちょっとくらいは知っている、かも知れないけれど、そもそもソレと同じかも怪しい。
「ロイ団長、マナーブックとか、貴族の常識とか書いてある本って売ってる?」
「書店などに売っているが……急にどうした?」
貴族の常識を何も知らないこと、知りたいことを話すと、団長が柔らかな顔で本屋に行こうと言い出した。
少し歩いたところにあった二階建ての本屋に到着した。
店の少し奥の方に手を引かれ歩いていく。
「この辺りがマナーなどの本だ」
「おお!」
幼児用から大人向け、男性向け、女性向けと色々な種類があった。
幼児用と初級編の二冊の中身をぱらりと確認して買うことに決めた。
会計へと向かおうとすると、団長にさっと取り上げられてしまう。
「ちょ……」
「これは、私を理解したいから、と思っていいのか?」
まさかのストレートな確認に顔が熱くなってしまった。
団長が勝ち誇ったような顔でニヤリと笑ったのが何だか悔しい。
「ん。これは私が買う」
「なんで。やだ」
「カリナ、私の顔を立てると思って?」
耳元に唇を寄せられ、「頼む」と低く囁かれた。
背中がゾワゾワゾクゾクする。
ズルい。
急に男らしくするなんて。
「……ありがと」
「ん。素直なカリナは可愛いなぁ」
ちゅ、と頬に優しく甘いキスをされた。
ズルい、ズルい、ズルい。
可愛いのに格好良いとか、ズルい。
「さ、もういい時間だ。惜しいがそろそろ戻ろうか」
「……うん」
手をしっかりと繋いで、馬車へと向かった。
初めは帰りたいなんて思ったりもしたけど、ロイ団長の色々な面を見れて、楽しかったし、嬉しかった。
…………伝えたい言葉は、絶対に言わないって決めてたけど。
つい、キスしてしまった。
王城の馬場で団長と別れて、使用人棟へと戻りながら反省。
棟の前まで送ると言われたけど断った。
だって、離れるのがどんどんと惜しくなるから。
「はぁ、いかんなぁ――――」
「――――何が駄目なんですか?」
「ひょぇ⁉」
使用人棟の玄関に気だるそうに寄り掛かる『ヒョロもやし』こと、薄青ががったロングヘアーの美青年でもあるハンス副団長。
なぜにこんなところに? と思っていたらわりとすぐに理由は判明した。
「団長とのデートは楽しかったですか? 素晴らしく素敵なエスコートをしていただいたことでしょう? その小包は? ジュエリーですか? それとも服?」
「おぉぉぉ? えっと…………ウチに嫉妬?」
――――どんだけ団長大好きなん?
「ハァ。何故そうなるのですか……」
副団長にグイッと腕を引かれたことで身体がぐらつき、本を落としそうになった。
そちらに気を取られていたら、ドンッと壁に押し付けられていた。
「ちょい……」
「貴女は、私のことを全く見ていませんよね?」
「はいぃぃ?」
何のことだと言いたかった。
「貴女のそういうところがとても嫌いですが、愛しています――――」
「んむ――――⁉」
燃えるような金色の瞳がぼやけて見える。
押し付けられた唇が熱い。
壁に押さえつけられ、逃げられない。
握りしめられた手首は、少しだけ痛かった。
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