第11話 福岡県民、場違いな気分になる。
暫くの間、ベンチの上でアルマジロのように丸まった団長の横に座っていたけれど、飽きた。
「団長、お腹減った。さっきのカフェ行かん?」
「……ん。カフェ、行く」
丸まったまま、カタコトで返事された。
謎の生物だ。
お店に入ると、心底場違い感。
女性は全員がデイドレス、男性はかっちりしたスーツだった。いわゆる正装。
団長はいい。なんかビッシリ決まってるから。頭以外は。
私はおしゃれなワンピースではあるけれど、いわゆる平民の服といった感じ。そも子供服だし……サイズ的なせいで。
「入って大丈夫なん?」
入口で団長を見上げて確認すると、にこりと微笑まれた。
大丈夫っぽいなぁと店内に視線を戻すと、足早にでも走らずにな感じで店員さんが現れた。
「ようこそおいでくださいました、グランホル厶様。ご案内はテラスでよろしいですか?」
「あー、いや、
「かしこまりました」
――――今日は。
案内された個室は、淡いナチュラルウッド色のとても落ち着く雰囲気で、所々に飾られた観葉植物と窓からの見えるバラ園が美しく調和していた。
「ここ良く来ると?」
「よく、というほどではないが、たまにかな」
「ふぅん」
私に食べさせたいものがあると言われたので、メニューは見ずにお任せした。
ここの地区の事を軽く聞いている間に運ばれてきたのは、ぶっといマカロニのようなリガトーニのボロネーゼ、何かよくわからないけどおしゃれな形の葉っぱと生ハムのサラダ、甘いコーンポタージュのスープだった。
ランチのセットらしい。
牛ミンチとトマトソースが調和した良い匂いが鼻をくすぐる。
「美味しそう!」
「ん。私の一番のおすすめだ」
美味しいものは幸せな気分になる。
妙におどおどしっぱなしだった団長もニコニコになっている。
「デザートは入るか?」
「うん!」
デザートに出されたのはアップルパイ。甘酸っぱくて香ばしい匂いが部屋に充満している。
「ふわぁぁぁ、表面がまだフツフツしてる!」
「ははは、熱いから気をつけて」
「うん」
予想はしていたけれど、熱い!
はふはふと言いながら食べていると、団長がくすくすと笑いながら、自分もパイを口に運んでいた。
ナイフとフォークの使い方が綺麗で見入ってしまう。
――――鷲掴みで食べんくて良かった!
「ん、美味い。カリナ、気に入ってくれたか?」
「うん!」
力いっぱい頷くと、団長がまた嬉しそうに微笑んだ。
可愛いなぁと思いつつ、アップルパイの残りを堪能した。
お店を出る際に支払いをしようとしたけれど、なぜか団長が払わなくていいと言い出した。
しかも、団長さえも支払いをしないままで、エスコートされてお店から出てしまった。
「食い逃げ⁉」
「は⁉ いや、支払いは請求書が月で纏めて家に届くようになっているから……」
そんな方法というか、ルールがあるとは知らなかった。
もちろんその場で払う人たちもいる。ただ団長はそうしてるのだそうな。
「ふぅん」
「はははっ。あまり興味なさそうだな?」
「うん。で、私のいくらだったの?」
食事代は自分で払うと言うと、団長がむっとした顔をした。
「カリナ、私は女性に支払いをさせるほど貧しくもなければ、礼儀作法を知らない者でもない。それとも、そういう男だと思っていたのか?」
「ちがっ…………」
まさかそういった方向で受け取られるとは思わなかった。
ただ、奢られることに慣れていなくて、『ワリカン』という感覚だった。
――――ウチ、貴族のルールを知らなすぎやん!
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