第7話 福岡県民、待ち合わせする。
鏡の前で、前、後ろ、横、斜めとそれぞれの角度から自身を確認。
「ふぅ。どう?」
「おお、凄かね! こがん可愛か格好と髪型、初めてばい」
「ん? こがんかわいか? 喜んでるのよね?」
「うん! ありがと!」
朝イチで叩き起こされ、選んでいた洋服を打ち捨てられ、フレアータイプの清楚系ワンピースを着せられ、ヘアメイクを施された。
どうやったか分からないが、両サイドを編み込みされ、花の飾りまでつけてもらった。
ただひとつの懸念は、三十歳がしていい格好なのかだけど。
お姉様方には、未だに年齢を勘違いされていそう。
そもそも、お姉様方はたぶん私より年下だけども。
ルンタッタとスキップしながら王城正門へ向かった。
フレアータイプの裾がひらりひらりと舞って何だか楽しい。
「カリナッ!」
「はい?」
後ろから名前を叫ばれて何事かと振り返ると、キラキラしい偉丈夫がありえない程に爆走してこちらに向かってきていた。
「ぎぃやぁぁぁぁぁ!」
「どうしたぁぁぁ!」
金色の髪をオールバックに撫でつけ、オートクチュールであろうキラキラしいジャケットとボトムス。クラヴァットとかいうひらひらの襟巻き?を着けている。
ガタイがとても良く、一八〇センチは超えていそうだ。
それが、こちらに向かって走ってくるんだから、怖い以外の何でもない。
偉丈夫の金髪が一房ピョロンと撥ねて、うねっとしているのが見えた。
「ぁぁぁ……あ? ロイ団長?」
「大丈夫か⁉ 何があった⁉」
犯人はお前だと言いたい。
バッチリキメ過ぎてて、誰か分からなかった。
「団長……そんなピシッとも出来るんやね?」
「べ、別にデデデートだからと張り切っているわけではなく、紳士としての嗜みというか――――」
団長がモゴモゴとなにかを言い続けていたけど、無視して胸元のクラヴァットをグイッと引っ張った。
「屈んで」
「む?」
なぜだというような顔をしながらも、しっかりと屈んでくれる団長。チョロすぎる。
団長の頭をクシャクシャと掻き混ぜて、手櫛で整える。
「ん。これでいつもの団長やね!」
「っ! と、尊いっっっ」
何かに打ち震えているけども、さらに無視して団長の右手を取る。
指を絡めていざ出発! ……とはいかなかった。
団長が一歩も進んでくれない。
「団長?」
「…………ゆび」
「指? 手、繋いだら駄目やった?」
「…………このまま」
「え? このままでよかと?」
こくんと頷かれた。
手はこのままで良いらしい。ならば歩けと言いたい。言ったけども。時間は無限にないのだから。
城下町は王城に近ければ近いほど、商店が高級になっている。私が買えるものが売っている地域まで徒歩で二十分も掛かるのだ。
そして、王城に近く、高級店ばかりが集まった地区を『貴族街』と皆は呼んでいる。
「カリナ嬢、今日は何を買い求める予定だ?」
「んー。そいが、一昨日お姉様方に服や下着ばばさらかもらったけんが、買うものがなくなったとよ」
「…………ちっ、それでか」
買うものがないと伝えたら、なぜか舌打ちされてしまった。
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