第5話 福岡県民、説教される。
部屋に置いていた荷物を持って団長の執務室に戻ると、謎の二択を突き付けられた。
「団長の家か、副団長の家?」
二人揃ってこくんと頷く。ちょっと可愛い。
「安全を確保するならこの二択だ」
「……」
「さぁ、どちらかを選んで下さい」
「…………あのぉ、ここって王城の敷地内やんね?」
だから何だと二人して言っているけれど、気になって仕方ないから聞いてしまおう。
「王城横の女性使用人棟の一室って借りれんと?」
「「……」」
さっき荷物を取りに行った時に、隣室のジョージが言っていた。そもそも、女の子なのになぜここの寮にいたんだ? と。
使用人棟には子供も結構いるらしい。
「いや……それは…………その、カリナ嬢は言葉が不自由だったから…………」
「確かに。言われるとそうですね。使用人棟がありますね」
「おまっ、いきなり裏切るとか……」
ヒョロもやしことハンス副団長は、髪の色と同じように涼し気な顔をして、ぶつくさ言うロイ団長を無視していた。
酷いやつだ。
新しい部屋に入り、窓を開ける。
ここは、六畳ほどの広さに、ベッドと少し小さめのテーブルが置いてあり、クローゼットは壁に埋め込まれているタイプの使用人部屋。
窓からは城下町が遠くまで綺麗に見えた。
「わぁぁぁ、よか眺めやね!」
「あら、気に入ったのね。良かったわ」
案内してくれた女性使用人棟の管理人である、全体的にふくよかなタマラさんに頭を撫でられた。
――――おや? またもや子供扱い?
まあいいかと放置して、荷物を片付けた。
あまりにも少ないので、次の休みに団長が買い物に連れて行ってくれるらしい。
デートかと聞いたら、団長がわたわたと慌てていて可愛かった。
使用人棟のお風呂は、大衆浴場のようになっていた。
騎士団では各部屋にシャワールームがあったので助かっていた。諸々が長い間バレなかったのはそのおかげなんだろう。
脱衣所でスペペペンと服を脱いでいたら、なぜか周りにいた数人からガッツリと見られている。
どうしたんだろうなと思いつつ、お風呂場の方へ歩き出したら、『ボン・キュッ・ボン』なお姉さんにガシリと腕を掴まれてしまった。
「貴女、大人なの⁉」
「へ? そうやけど?」
「え? どこか火傷してるの?」
――――なぜそうなる。
「大人やけど」
――――あ、また言っちゃったよ。
「あ! 大人ですって言いたいのね?」
通じたものの、また口を開くと方言が出そうだなと思い、こくこくと顔を縦に振って返事した。
なぜかお姉さんはみるみるうちに般若顔になったけども。
「何で布巻いて胸を潰してるのよ!」
「へ?」
ブラを買うお金がもったいないと思ったから、サラシ巻いて解決させておいたのだけど、お姉さんには理解できなかったらしい。
「元々小さいのにそんなことしたら! 形まで崩れるでしょうが!」
なんでか説教された。
なんでかディスられた。
そして、なぜかそこからお風呂場にいた全員がお古で私のサイズに合うブラを手配してくれることになった。
しかも洋服も。
「おわー、ありがとうございます」
これなら、団長とのお買い物デートはナシかな。なんて思っていたら、お風呂場にいた初対面のお姉様方にオシャレしてデートに行け! と全力で説得されてしまった。
そして、結果を聞かせろと。
――――恋バナに飢えとるんかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます