話の結論
「質問の意図がわからないな」
セイラはどこか必死な感じで訴えたが、ベインの態度は冷ややかだった。
しかし不快な気配が歴然と現れた顔は、彼自身が言ったこととは違っていた。本当に意図を知らなかったら露骨に不快に思うこともなかっただろうから。
それを理解しながらも、セイラはさらに強く訴えた。
「パメラ様が殿下に悪く接しましたか? パメラ様を憎むようなことがありましたか? 殿下がパメラ様に抱いた敵意にパメラ様のせいである部分がありましたか? そうでなきゃ――」
「口数が多すぎるぞ」
ベインはセイラの言葉を切った。口調があまりにも冷たくてセイラが震えた。ベインはそれを見てしばらく口をつぐんだが、すぐに不愉快の気配を見せた。
「俺が要求したのはそなたの考えではない。そなたが俺を、姉君をどう思っても俺とは関係ないことだ」
「でも……!」
「俺との護衛実習契約を断りたいなら簡単に答えろ。一つ一つ余計なことを聞いてあげる気はないぞ」
「余計なことじゃありま……」
セイラは訴え続けようとした。しかしベインが冷たい目で睨みつけると、彼女は言葉をどうしても終えることができなかった。
結局セイラは目を伏せた。
「……やっぱり私なんかの言葉じゃ……」
「何言ってるのだ?」
「申し訳ございません。何でもないです」
セイラは再び頭を上げた。
ベインを見つめる瞳が強く輝いた。だがさっきとは少し感じが違った。何かを決心したような表情と、胸の前に集めて握った拳も決意を表しているようだった。
「一つだけお聞きします。パメラ様に……殿下のお姉さんにどうやって勝つんですか?」
「最も明確で否定できない指標。成績で勝つつもりだ。そのために優れた者との護衛実習が必要だ。だからそなたが必要だ。……しかし、これは俺の事情に過ぎない」
ベインは苦笑いした。
「そなたが断ったければ責めはしない。だが俺にはそなたが必要だから、そなたが受け入れてくれたらいいな」
セイラは再び拳を唇に当てて物思いにふけった。それがセイラなりの習慣だと気づいたベインは黙って待った。
一分ぐらい経ったか。セイラは決心を固めた目で再びベインを見た。
「……了解致しました。殿下のお役に立てるよう努力します」
「ありがたい。そなたにも害はないように頑張ろう。そういう意味で言っているのだが……」
ベインは手をセイラに伸ばした。
その手の届く距離ではなかったので、セイラは手を伸ばして彼の手を握るべきか悩んだ。だがセイラが実際に動く前にベインの指先から魔力の光が流れ出た。
ベインは眉をひそめて話し続けた。
「そなたに――」
その様子を、パメラは最初から見守っていた。
セイラにかけておいた追跡監視魔法。特別なことがあれば発動するようにしておいたが、こんなに早く活用できるとは思わなかった。
多様な観点と意見のためにアレクシスも呼んで確認していた。しかし、まさかベインがこんなに早くセイラに近づくとは思わなかった。セイラを取り込もうということ自体はある程度予想していたのだが、まずは普通に近づくことからやると思っていたから。
「ベイン殿下がライバルになりました」
「そうならないことを願ったんですけれどね」
パメラは心からベインと仲良くなりたかったが、その真心がベインに通じないことも経験として知っている。いや、正確には通じる機会が得られなかったというか。
そんなことを考えながら苦笑いしていたが、監視魔法の状況が変わった。
『そなたに追跡監視魔法がついている』
『え!? それは一体……まさか?』
ベインが描いた魔法陣が輝いた。その光がセイラを照らすと、彼女の体にも魔力の光が浮かんだ。その光が彼女の胸の上に一つの魔法陣を描いた。
それを見た瞬間、セイラの表情が固まった。一方ベインは予想したかのように鼻を鳴らした。
『姉君の魔力だな。理由は分からないが、そなたは姉君に監視されていたようだ』
短い瞬間、セイラの表情が目立って変わった。慌てて口を開けたり眉をひそめたりもし、最後は少し悲しそうに眉を垂らした。
『パメラ様は……
『そなたが姉君に何を考えて期待したのかは分からないが、姉君の真実はこうだ』
ベインは別の魔法陣を描いた。パメラの魔法陣を破壊するためだった。慣れていないのか時間が少しかかったが。
それが完成する前、セイラは強い意志を持った目でベインを眺めた。
『殿下をお手伝いします。全力で』
『うむ? 急にどんな心境の変化なのかは分からないが、そうしてくれたら俺としてはありがたい。これからよろしく頼む』
ベインが言った直後に魔法陣が完成した。その力が追跡監視魔法を破壊し、パメラはもう二人の姿を見ることができなかった。
「ふぅん。アレクシスさん、どう思いますの? セイラさんの反応について」
「追跡監視魔法を良くないと思っている……と単純に判断するには何か怪しいです。魔法というよりも殿下のなされることについて何か期待するところがあったようです」
「私の目には少なくとも私に悪意を持っているようには見えませんでしたわ。貴方が見るにはどうでしたの?」
「自分もそう思います」
そもそもセイラに追跡監視魔法をつけた理由は〝聖女〟というキーワードに対する理由の分からない敵意のためだった。しかし少なくとも、少し前のやり取りを見ればセイラが敵意を抱く理由はなさそうだった。
セイラがパメラを良くないと思ったのは残念だが、印象はこれから少しずつ変えればいいだろう。パメラはそのように心を整理した。
そして一つ思い出したことがあった。
「ところでアレクシスさん。貴方も私のことを殿下じゃなく名前で呼んでくださいね」
「急になぜですか?」
「貴方よりも会ったばかりのセイラさんも名前で呼んでくれるじゃないですか」
アレクシスは護衛としてまっすぐ立ったまま眉をひそめたが、ため息をつくまで長くはかからなかった。
「断っても押し続けるでしょう。断る理由も特にありませんので、かしこまりました」
「ありがとうございます」
パメラは楽しそうに笑った。
これからの学園の生活がどうなるか確信できないが、いろいろな意味で楽しいだろうと思った。
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