貞潔な翼

貞潔な翼 プロローグ

 私が彼女のことを知ったのは、十一年前のことだった。

 私と一緒に暗闇の中から連れ出された彼女は、美しいお姫様のようだった。輝くような白い皮膚と黒くて長い髪は、みんなの『神様』に似ていた。


 私は、大きくなった彼女を、ただ見ているだけで良かった。少しずつ人間になっていく彼女は、きっと私と共には歩めない。


 でも、神様は、それを許してはくれなかった。


 縁を結べと、私に言って、私に姿を与えた。


 だから私は、今日も彼女の『こわいもの』を壊している。


 いつか彼女が、魘されずに眠れるように。

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