第13話 コイジャーという男
リーディアはこのクサいセリフを理解しようと悩ましい表情をすると、顎に手をかけて俺に質問をしてきた。
「じゃあ、今農民が反乱を起こしている相手の領主は敵?」
「まぁ今のところは敵ですね。これからも敵だと思いますが。農民が反乱を起こすにも理由がありますし……理由は分かりきっていますが」
「もしかして、前に城門で我に助けを求めていたケイル村と関係がある領主だったりするのか?」
「さすが王女、察しがいい。ということで明日、ケイル村とその領主の元へ赴くと致します」
「明日!?なんとまぁ……気の早いこと早いこと。もしよかったらじゃが、我も一緒に行ってよいか?」
「は?リーディアが?王女が?ダメに決まってるじゃないですか。ここでぐ~たらしていてください」
「我もたまには外に出たいのじゃが?」
「いまあなたに何かあったら、王女の後ろ盾というものがなくなってしまいます。だからじっとしておいてください」
「はぁぁぁぁぁぁぁーーーー」
ケイル村に関する情報は前々から下調べをしていたので、ついでに領主の情報もすべて調べあげていた。
領主の名前はサキバ・サインス。
自分の欲や金のためには手段を択ばないことで有名らしい。
一応はカエザル派に属している領主ではいるが、議員ではない。
そもそも王国議会の議員になるには、一定の地位や領地があって議会の十分の一の推薦があれば誰でもなれるらしい。つまり超高額な議員の報酬をもらいながら自分に都合がいいように国に働き掛けることが可能だっていうわけだ。
ではなぜ、サキバ・サインスは議員にならずにいるのか。
議員になって国に働き替えるメリットより、宮殿や王国議会にあえて干渉しないということで、宮殿の外という監視の目が届かない場所に身を置き、悪いことがやりやすいというメリットの方が大きいからだ。
なんともまあ陰湿なネズミだ。
現に、俺がいくら宮殿の中で「民の税を下げろ」といったところでこういう輩は聞く耳を持たない。
直接懲らしめてやらないと、いつまでたっても罪のない民が苦しんだまま。
俺は明日宮殿を出てから起こりうる想定を、何十通りもイメージしながら、ありとあらゆる対処の仕方を頭からひねり出しながら、眠りについた。
朝日が窓とカーテンの隙間から入り込み、眩しい光で目を覚ました。
あと五分もしないうちに緑色の太っちょの、”ドッス・コイジャー”が俺を起こしに部屋にやってくる。どうせならかわいいメイドとかに起こしに来てほしいのだが、女ったらしと思われたくもないし、前のカエザルからの悪しき伝統なので、しかたなく彼が来る前に起きておく。
着替えをすませたりして、朝の身支度を整える。
――3、2、1、
コンッコンッとドアのノックをあの緑は、毎日毎日同じ時間で鳴らしてくる。
「カエザル様。朝のお時間です。」
俺は、ノックされたドアを開け、ドッスに挨拶をする。
「おはよう。コイジャー」
「おはようございます。」
深々とお辞儀をする緑色のネコ型ロボット。頭を下げるのはいいが、そろそろそのパツパツな背広ビリビリっと破れるのではないか?
俺がカエザルに転生してから、彼の体形が横に増した気がするのは昨日せいだろうか?
カエザルの悪役っぷりから解放されて、心身的にも余裕が出たからなのか?
そもそも、議員という立場であり、非凡な才を持ち合わせながら、カエザルの身の回りを世話をしている?経緯は?
色々と謎が多い人物である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます