第30話

「これで 終わりだァ」


 空気との、摩擦で流線型になる金塊。


「ハーッ」


 動きを、見極める為に抜刀の構えをするサラ。

 一旦、男の方に飛んで行った金塊が上空でUターンして熱をおびながらサラに先端を向けると、


キンキーン


 高速で、飛んで来る金塊を刀でかわすが何発か体をかすめて服が破れる。


「なにっ !!」


 1発も、ダメージをあたえられないことに苦悶の表情を浮かべる男。

 ヤリのように、尖った金塊は壁にトゲを生やしたように止まっている。


「もう 降参したらどうですか?」


 サラが、哀れみの顔で男を見つめると、


「うるさい

お前だけは 絶対に倒してやる !!」


 男は、そう言うと足元に魔法陣を出現させる。


「お前

正気か ??」


 男の、姿がみるみる邪悪に醜く変容していく。


「魔装神華!!」


 そう言った男の、クチが前に伸びて牙が生える。


「あーあ

あれは元には戻れないのに」


 生きるか死ぬかの、1回だけ使えるワザで二度と元の姿には戻れないのでNPCくらいしか使わないんだよね。


「ガォーーーン」


 地獄犬へと、魔装した男。


「早く 葬ってやらないとな」


ガキーーン


 地獄犬が、鋭い鉤爪で切り裂こうと振り下ろすがサラは刀でそれを受け止める。


「ガォ」


 地獄犬の、左拳がサラの脇腹をえぐるように突き刺さる。


「ぐはッ」


 サラに、ダメージが入る。


「ガウ」


 サラに、蹴りを入れて吹き飛ばす地獄犬。


「ギャ」


 岩壁に、めり込むサラ。


「サラちゃん !!」


 かろうじて、死亡判定にはなっていないようだ。


「グゥゥゥ」


 少し、口角を上げる地獄犬。


「マジかよ………」


 あんなに、強いサラが瀕死状態になるという非常事態にテストどころじゃあないね。


「サラちゃんに 回復魔法をッ」


 とりあえず、ナージャ彡さんにサラちゃんを助けてもらわないと。


「いや それよりこいつを倒さないと」


 モンスターを、倒すのが先だと言うアーバイン。


「ガウァ」


 ダッシュで、こっちに来る地獄犬。


「あぶないッ」


 あわてて、ガード姿勢をとったあたしだけどそのモンスターとの間に人影。


「ッツ

ワーカスト!?」


「クッ

大丈夫か」


 あたしを、かばって背中に地獄犬の攻撃を受けたワーカスト。


「うん………

でも」


 一気に、瀕死状態になるワーカスト。


ズドーン


「グハア」


 魔弾石を、受けて弾け飛ぶ地獄犬。


「クッ

オレは もうダメみたいだから 先に離脱するよ」


 ガクリと、倒れこむワーカスト。


「ワーカスト !!」


 ワーカストの、頭を抱えて揺するが反応がない。

 死亡状態となって、このミッション中は復活出来ない。


「あー

もっとイイとこ見せたかったな」


 深い、ため息を吐くワーカスト。


「もう十分よ

かばってくれて ありがとう」

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