第31話

「ガゥゥゥ」


 魔弾石に、当たって吹き飛ばされた地獄犬だが海に叩きつけられ死んだかと思っていたらヌーッと出て来てまだ生きている。


「チッ

ノーダメージかよ しぶてぇな !!」


 苦虫を、噛み潰したような顔をするアーバイン。


「ウソでしょ

直撃だったのに………」


 目の前のことなのに、信じられないあたし。


「グアーーーッ!!」


 なぜか、またあたしに向かって来るモンスター。


「ここまでなのッ」


 ガード姿勢を、とりながら腰の村正を抜く。


ズバーン


 鋭い、太刀筋がはしる。


「ガウグル」


 地面へ、ベタりと倒れこむ地獄犬。

 だけど、あたしが斬ったんじゃあない。


「サラちゃん !!」


 そこには、血がにじみながらも無表情で立っているサラの姿。


「ふぅ

これで 合格かしら?」


 静かに、クチを開くサラ。


「うん

ありがとう」


 いくら、ゲームの中とはいえ死ぬのは気分悪いもんね。

 助かったわ。


「いやまだだ」


 右手を、前に出すアーバイン。


「えっ」


 あたしが、ビックリしちゃった。


「ミッションは まだ続いている

ヘリまで走るぞ」


 丘の、上にあるヘリコプターを指差すアーバイン。

 ターザニムの、生配信を見ている視聴者もクリアがまだだとヤジが飛ぶ。


「うん

まだ 星が1つ付いてるから」


 そうこうしていると、パトロール車のサイレンが聞こえて来る。


「金塊………

ヤリ状のを回収するぞ」


 ミッションクリアの、条件は金塊の入ったアタッシュケースと現金を強奪してある場所にいる人物に届けると成功となる。


「おーう」


 素早く、壁から抜き取ってアタッシュケースに詰め込む。


「よし ヘリまで急ごう」


 ワーカストの、遺体は置いて行く。


「はい」


 大急ぎで、崖の獣道を登ってヘリのところまでたどり着く。


「さあ

早く乗って」


 向こうに、赤色灯がチラりと見える。


ドドッ


 魔弾石が、飛んで来てヘリに当たる音がする。


「おい もうパトロール来たぞ」


 アーバインが、スイッチを入れてローターがゆっくりと回りはじめる。


「早く 離陸して !!」


パラパラパラ


「うぉー

ギリギリで逃げれたぞ」


 なんとか、捕まらずに上空へ上がれた。


「でも ケムリ出てるよヘリ………」


 後ろを、見ると派手に白煙を吐いているヘリ。


「大丈夫だ !!」


ピーピーピー


 アーバインが、大丈夫と言ったにもかかわらず高度が落ちていく。


「あっ

ダメかも」


 あせるアーバイン。


「わー

落ちるぅ」


 これじゃあ、みんなお陀仏よ。


「ハハハ

オートローテーション !!」


 機首を、グイッと下げるアーバイン。


「えっ

オートローリューがどうしたって ??」


 サウナに、また行きたいな。


ヒーーーイィィィ………


「ふぅ

なんとか不時着したぜ」


 広い、道の真ん中に強引な着陸を成功させるアーバイン。


「ナイス !!」


 ねぎらいの、声をかけるあたし。


「さぁ まだ目標地点まで距離があるから車を奪おう」


 親指を、立てるアーバイン。


「うん

もう確保したわ」


 近くにいた、車からドライバーを引きずり出すサラ。

 運転手に、乗り込む。


「早いねサラちゃん

さすがだわ」


 ミッションを、やってなかったみたいだけどこのゲームやり込んでいるわね。


「急ぎましょ」


バタム


「みんな乗った?」


 後ろを、振り返るサラ。


「オッケー

大丈夫だよ」


 親指を、立てるあたし。


「ゴクり」


 生唾を、飲むサラ。


「え………」

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