第28話

「おい サラ」


 崖下を、見ているサラを手招きして呼ぶワーカスト。


「はい?」


 ヒョコヒョコと、ワーカストに付いて行くサラ。


「お前 押しすぎだよ

キョウカさんを 落としてどうするんだよ」


 小声で、叱責するワーカスト。


「でも 押すように言ったじゃあないですか」


 顔を、しかめるサラ。


「違うよ! ちょっと押して よろついたところをオレが助けて ホレられるってことだろ」


 言葉数が、足らずに意図が伝わっていなかった。


「それなら ちゃんとキョウカを掴んでください」


 腕組みして、反論するサラ。


「いや 軽く押してくれなきゃさ掴もうとするオレも崖から落ちるじゃあないかよ」


 イラッとするワーカスト。


「最初に しっかり説明してくださいよ」


 タイミング的に、ちょっと押してしか伝わっていない。


「いや わかるだろ」


 頬を、赤くするワーカスト。


「わかりませんよ

結局 なにがしたいんですかワーカストさん ??」


 首を、かしげるサラ。


「それは」


 耳まで、赤くなるワーカスト。


「それは ??」


 ワーカストの、顔を覗きこむサラ。


「わっ !!」


 ターザニムが、スマートフォンを片手に持ちサラとワーカストの間に割って入る。


「なになに? 恋バナ ??」


 ヒソヒソ話の内容を、聞き出そうとするターザニム。


「いや 違いますよ! キョウカさんと付き合いたいとか思ってないですから !!」


 妙な、誤解を受けたと否定するワーカストだが本心は隠しきれない。


「えー

なんか 強く否定するところがいかにもなんだけど」


 ニヤリと、口角をあげてジト目で見るターザニム。


「あっ 船が接岸しますよ」


 気を、そらすように指差すワーカスト。


「あーそうだね

アレ? キョウカちゃんはどこに行ったの ??」


その頃


「それで定期点検でディーラーに行った時にエアコンのフィルターにゴミを乗せて見せる為に持って来てさ」


 アーバインが、最近あった愚痴をナージャ彡に話している。


「うわ 最悪だね」


 同情するナージャ彡。


「だろ

ムカつくから 殴ってやろうかと思ったよ」


 半笑いの、アーバインだが、


「殺しちゃえばイイのに」


 過激なことを、口走るナージャ彡。


「イヤ

リアルで殺人はマズいでしょ」


 ついつい、笑ってしまうアーバイン。


「あーね」


 ニコッと笑う、ナージャ彡。


「おっ そろそろだな」


 船が、接岸しようとしている。


その頃


「おい 船が来てるぞ

ヤツらを待たせるな」


 岩場を、探っている男に対して呼び寄せる男。


「ああ わかった」


 汚れた手を、叩いて砂を落とす男。


「ふぅ

なんとかバレなかったわ」


 2人の男が、立ち去るのを見てホッとするあたしなんだけど手元にグニャッとした感触があって、右手を見るとそこには生首が転がっている。


「ヒッ !!」

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