第3話 禁忌魔術
血を流し過ぎたのか身体は冷え視界は霞み、身体に力が入らなくなって来ているのが自分でも分かる。
何もしなければ俺はもうすぐで死んでしまうだろう。
「でもな、だからと言ってただやられるだけの俺だと思ったら大間違いだ。残念だったな」
そして俺はありったけの魔力を使ってとある禁忌魔術を行使する。
この禁忌魔術を使うのは初めてである為、ぶつっけ本番も良いところなのだが何もせず死んでいくのよりかは何倍も良い。
「貴様、この状態で一体どんな魔術を行使できると言うんだ? 血を流し過ぎて正常な判断ができなくなったのか?」
「確かに、今の俺は魔術を行使できるほどの魔力も残っていない。だが魔力が底をついている状態であろうとも行使できる魔術があるんだよな……これが」
「まさか、貴様っ!?」
「今更気付いてもおせーよ。俺と一緒に地獄へ落ちようぜ……っ?」
「ふ、ふざけるなっ!! お前まさかこの俺を『生贄』にして、それを原動力に魔術を発動しようとしているのかっ!?」
そして氷室は現状を理解して喚き始めるのだが、もう遅い。
そんな氷室を見ながら俺は氷室を生贄として禁忌魔術の一つ『星渡り』を行使し、意識を手放すのであった。
◆
懐かしい夢を見た。
幸か不幸か俺が行使した『星渡り』は問題なく発動し、気が付いたら異世界転生をしていた。
「実に懐かしい夢を見たな……」
俺がこの世界へ転生してから約十五年の歳月が経っていた。
ちなみにこの世界での俺の名前はカイザル・フォン・クヴィストであり、産まれた国であるグラディアス帝国の公爵家長男であり嫡男候補である。
そして万が一この世界で俺が前世で覚えてきた魔術の数々が行使できない可能性もあったのだが、どうやら何の問題も無く行使できるだけではなく、基本的に文明の発達レベルや獣人や魔族にエルフなどの他種族がいる事を除けば前世と殆ど同じである為その点に関しては一安心である。
しかしながら子供の身体では保有している魔力量も当然大人と比べて少なく行使できる魔術の種類に限りがあり、この世界での幼少期は基本的に魔力保有量を高める修練に明け暮れていた。
そのお陰か十五歳の今では前世の俺よりも既に魔力保有量に関しては上回る程にまでは成長していた。
やはり子供の頃が一番魔力保有量が伸びやすいというだけあって恐ろしい程の成長率である。
一般的にはどんなに英才教育を行おうが子供が物心ついたころ位からなのだが、転生した俺は赤子の頃から修練できたというのはかなり大きかったようである。
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