第57話

 疑問に思うことは多々あるが、両親は今回の話をどう思っているのかを聞いたところ思いの外に肯定的だった。


 怪異との戦闘みたいな危険な事ではないからか、何事も経験だからと賛成しており、秋祭りの豊穣祭では家族揃って一緒に俺が舞う神楽を見物するとまで言っていた。


 「雷珠と葉月はどう思う?」


 「良いんじゃないか?ご主人の今後を考えれば悪いことではないだろうし。」


 「私たち全員でサポートしますよ。それに私しか教えられない物がありますから。」


 葉月しか教えられない事とは何かと思うが、とりあえず雷珠と葉月も賛成の様だ。


 「それでどうかな?やってくれるかい?」


 「はい。精一杯頑張ります。」


 「そうか!それは良かったよ。これで私も次の話が出来る。少し待っててくださいね。」


 三鷹さんの後ろに置かれた大きな鞄の中から色々な物が取り出される。


 梱包された巫女服や神楽を舞うのに必要と思われる道具の数々、そして封魔管が1本がテーブルの上に置かれる。


 「これは神楽を舞う為の練習用の道具だよ。でも、練習用だけど道具に使用している素材は、本番の時の物よりも素材としてのランクは下だがしっかりした物なんだ。大事に使って欲しい。」


 「分かりました。」


 真剣な表情で言われて、俺も見ただけで練習用にも関わらず力を感じる道具の数々を見て真剣に頷いた。


 「この封魔管に入って居られる方がハジメくんに神楽の舞い方を教えてくださる方なんだ。失礼のない様にして欲しい。」


 再び真剣な表情になる三鷹さんだが、今回の表情にはどこか緊張感の様な物を感じられた。


 それも封魔管の中に入っているだろう怪異に対してのものだ。一体この中に入っている怪異はどんな怪異なのだろうか?


 「分かりました。でも、この中に何が入っているんですか?」


 「そうだね、それは言わないといけない。封魔管の中には神の分霊が入っているんだ。」


 「えっ……そ、それは本当なんですか!?」


 まさかの神様が分霊だろうが入っている事を聞いて驚いてしまう。それは俺だけじゃなく、三鷹さん以外のこの場に居る全員が驚いていた。


 「はい。アメノウズメ様の分霊が入っております。」


 確か裸で踊っていた神様だったかな?それでもなんで神様が分霊でも俺に神楽舞を教えてくれるのか、それが疑問だが、これは神様側から何かしらの話が出ているのかも知れないし、聞いてもいい話なのだろうか?


 「あの、なぜアメノウズメ様が俺に教える事になったんですか?普通は神楽を舞える人が教えるんじゃ?」


 「私には分かりません。私以外にもウカノミタマ様の神託を受けた者がおり、その方がアメノウズメ様が入って居られる封魔管を渡して来たのです。その方は何も詳細は言わずにハジメくんに渡す様にとだけでしたから。」


 結局なにも分からず終いだが、三鷹さんはどうしてアメノウズメ様を教師役にしたのかを聞いてくれるとは約束した。


 だが、アメノウズメ様が入っている封魔管を渡したのが、日本の討滅士機関の1つである日本の神仏との交渉を行なっている機関。


 日本神仏交渉機関【八尺瓊勾玉】の上層部の人である為、そこまで三鷹さんでは話をする事が出来るかは分からないとの事だった。


 「アメノウズメ様との契約をお願いします。」


 「契約って式神契約ですか?」


 「そうです。」


 神様を分霊でも式神として使役しても良いのだろうか?そんな表情が顔に出たのだろう。三鷹さんは構わないと肯定した。


 どうやらそこまで数は多くないが神仏と式神契約を行なっている者は多くはないが少なくもないらしい。


 気に入った者や報奨としてなどの場合に神様側から直々に分霊を送られるそうだ。


 これには神様側からもメリットがあるらしいが、その内容は三鷹さんは知らない様だが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る