第58話

 もちろんアメノウズメ様を渡して来た人が、そんな日本に3つある討滅士の機関の1つの、それも上層部と言われるくらい偉い人から渡された物だと分かれば、何かしらの政治的な問題などがあるのではないかと両親が心配する。


 だがそれは三鷹さんに言うには杞憂だと言われた。流石に何かしらの思惑があっても、神仏から分霊を渡される様な者たちに何かしらを行なえば、神仏側から神罰に近いものが下されるそうだ。


 それでも将来的に勧誘が凄いことになりそうだと、三鷹さんは笑っていたが。


 色々とアメノウズメ様が入った封魔管の事や、俺が何かしらの政治的に巻き込まれないかを聞いた後、いよいよアメノウズメ様との契約が行なわれる。


 封魔管から出す為にテーブルなどを片付けて居間に広いスペースを作ると、俺は封魔管を手に取って居間の中央へと移動した。


 「開けます!」


 封魔管に生体エネルギーを送りながら蓋を開くと、封魔管の中から生体エネルギーが放出されて一カ所に集まり人型へと姿を変えていく。


 集まり姿を変えた生体エネルギーは一瞬だけ光が発生すると、そこにビキニの様な物をその上から薄っすらと透けている羽衣を着た両手に扇と鈴を持つ神々しい女性が現れた。


 てっきり全裸の姿をしたアメノウズメ様が現れるのかと思ったがそんな事はなかった様だ。


 「やっと出て来れた!君が神代ハジメだね!私はアメノウズメ。君に神楽を教えるわ。神楽を舞うなら本当は女の子が良いんだけど。まあ、神代の者なら大丈夫でしょ!一緒に頑張りましょうね!」


 アメノウズメ様は明るい性格の様だ。にっこりと笑顔で笑いながら言うと、神々しく放っていた光が萎むように消えていく。


 あの神々しいオーラを放っていたら、緊張して喋ることが出来なさそうだったが、これなら挨拶する事も出来そうだ。


 「はい、よろしくお願いします。アメノウズメ様。」


 「固いなぁ。もっとフランクで良いよ!それに私にもメリットがあるからね!」


 日本の神様なのに英語を使っているのには違和感があるが、そういった海外の言葉も神様の間で使われているのかも知れない。


 「そ、そう?なら、普通にするよ。」


 「うんうん。そうしてくれると、こっちも楽で良いね!じゃあ、早速式神契約を始めましょう!」


 「契約内容はこれで大丈夫か?」


 デバイスをアメノウズメに見せる。契約内容を上から下までじっくりとアメノウズメは確認する。


 「うん!この内容で良いよ!」


 「それなら契約を始めるぞ。」


 デバイスを操作してアメノウズメとこ契約を開始した。デバイスから現れた契約陣がアメノウズメを包み込み始める。


 そして少しずつ契約陣が狭まって行き、アメノウズメの体内へと入って行った。


 「これで契約は終わったね!改めて、私はアメノウズメ!今後ともよろしく!!」


 アメノウズメとの式神契約が終わり、こうして4人目の新しい仲間が出来るのだった。


 アメノウズメとの契約が終わると、俺は他の契約した式神たちをアメノウズメに紹介する。


 「右が雷珠、真ん中がクロノワール、左が葉月だ。」


 「オレは小鬼の雷珠だ。よろしくな。」


 「にゃにゃん、にゃんんにゃん!(クロだよ、よろしくにゃ!)」


 「アメノウズメ様、私は妖狐の葉月です。よろしくお願いします。」


 「うん、3人とも今後はよろしくね!」


 そして、お互いの自己紹介が終われば居間に集まっている家族の紹介を行なっていく。


 そうして家族への自己紹介が終わると、三鷹さんとの話し合いを再開する。


 アメノウズメとの式神契約を行なった事を表す書類の作成や、今後どうすれば良いのかなどの話し合いを終えて、三鷹さんは帰る様だ。


 「ハジメくん、頑張ってくださいね。」


 「はい。」


 「それでは皆さんお邪魔しました。」


 三鷹さんが帰るのを見送ると、これからの事を俺は式神たちと家族で話し合っていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る