第55話
時田が教師たちに怪異と戦った事に対する説教やお礼などをされている間、俺と牧田は剃髪の討滅士の人に呼ばれていた。
「君たちからも聞きたいと思ってね。あの怪異の事で分かることはあるかい?」
「私はないです。キツネちゃんも頑張ってたけど、負けちゃいました。」
牧田が先に答え、自身の式神である妖狐が心配なのだろう。牧田は自分のデバイスを心配そうに見つめていた。
「そうか、君はどうかな?」
「あの怪異は自分の姿を見れる人を探していたのだと思います。」
「ほぅ、それは何故かな?」
俺は自身がトイレに向かった時に遭遇した事と、本来なら怪異を見る事が出来ないはずの生徒が怪異を見てしまったせいで取り憑かれていた時のことを伝える。
それに時田が怪異を見れる事を大声で話した時に、あの怪異は時田の方を瞬時に見つめて取り憑いていた生徒から離れた事も伝えた。
「なるほどね。理解したよ。」
「それで聞いて良いですか?」
「何かかな?」
俺は怪異がどうなったのか、それと怪異に最初に取り憑かれて生徒は既に回復しているが問題はないのかを質問した。
「怪異は私が祓ったよ。もう存在しない。それと取り憑かれていた子にはちゃんとした処置を施して回復の術も使ったからね。歩いて自分の家に帰るくらいは出来るはずだ。でも2、3日は身体を休める様に言っておいたから休むだろうけど心配しなくて大丈夫さ。」
「教えてくれてありがとうございます。」
聞きたい事も聞けて、お互いに話すことがなくなると、俺と牧田は討滅士の人にお礼を最後に言って自身のクラスの班に戻った。
そうして戻れば討滅士の人とどんな事を話したのかを質問攻めにされてしまうが、答えられる範囲で牧田と一緒にクラスメイトたちの質問に答えていく。
教師陣が時田に対する話が終わり、今度は討滅士の人との話し合いが行なわれるが、それは下山しながら行なわれる事になる。
あの剃髪の討滅士以外の高尾山勤務の討滅士たちも複数集まっている様で、一応の護衛の様にしながら高尾山の名所を案内や説明をしてくれた。
そうして怪異騒動があった結果、本来の下山時刻を30分ほど延長してしまったが、あれから何事もなく無事に下山する事は出来た。
護衛をしてくれた討滅士の人たちにお礼を言って別れると、高尾山の駅から小学校を目指して電車に乗り込んでいく。
それから小学校にたどり着いた俺たちを待っていたのは、それぞれの生徒の保護者たちだった。
どうやら怪異と遭遇した事を既に教師たちは小学校へと知らせていた様で、小学校に残っていた教師がそれぞれの生徒の保護者に伝えた様だ。
小学校の敷地で解散となり、俺は迎えに来ていたお母さんと葉月の元へと向かった。
「ハジメちゃんは大丈夫だった?」
「うん、襲われてないから大丈夫だよ。それに戦わなかったからね。」
「そう、危ない事はしちゃ駄目よ。まだまだ子供なんだからね。」
「俺が襲われないならしないよ。安心して、お母さん。」
ギュウッと抱き締めて来たお母さんを安心させる様にそう言うと、何かを調べていた葉月の方に視線を向ける。
「葉月、どうかしたの?」
「怪異にマーキングされていないかの確認をしました。どうやらマーキングの類いはない様です。」
怪異騒動もあったし、あの怪異以外の怪異だって遠くで見ていた者も居ても可笑しくはない。
だからこそ、そう言う怪異に目を付けられていない事には安心したし、それを調べてくれた葉月には「ありがとう」とお礼を言った。
それから俺はお母さんと葉月の3人で帰宅すると、家では姉さんと丁度帰ったばかりのお父さんもいた事から、夕食を食べながら今日はどんな事があったのかを話して行き、こうして高尾山での校外学習は終わるのだった。
昨日投稿する事が出来なかったので、今日は二つ投稿しました。
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